世界最大のアニメーション映画祭として知られるアヌシー国際アニメーション映画祭が、長編アニメーション作品のさらなる強化に動く。2019年に向けて新たな長編アニメーションの公式コンペティション部門を設立する。
新部門は「Contrechamp」と名付けられ、従来の長編コンペティション部門とは別に設ける。セレクション作品には独自のアワードが与えられる。近年のアヌシーの長編映画重視をさらに強化したものだ。
現在アヌシーのコンペティションは、短編部門、長編部門、テレビ部門、受託作品部門、広告部門の主要5部門から構成する。長編部門の公式コンペティションの作品数は2000年代になって拡大されたが、それでも10本前後。この10本の中からグランプリにあたるクリスタル賞、審査員賞、審査特別賞、観客賞が選ばれる。
一方、近年の世界的な長編アニメーション制作の増加により、アヌシーの長編部門のエントリーも増加している。2018年の長編部門のエントリーは97本。コンペティション採用率は約10%とかなり狭き門だ。
そこでコンペティションには至らなかったけれど、見逃すには惜しい作品をアウト・オブ・コンペ部門としてアワードの対象にはせず公式上映してきた。2018年には13作品が選ばれている。
アウト・オブ・コンペ部門は映画祭に多彩な作品をもたらす一方で、本選落ち、2軍とみられてしまうリスクもある。事実、長編部門のアウト・オブ・コンペでゲストがアヌシーで登壇するケースは少ない。
今回はこのアウト・オブ・コンペ部門を丸々Contrechamp部門に移行する。上映本数は現在と同じ12本前後とするが、これまでの本選から外れた作品とのイメージから一新しそうだ。
オフィシャルセレクションの選考方針は、「個性のある長編映画。観客に対して挑戦をしている作品」だ。それは部門名称の「Contrechamp=領域への対抗」からも読み取れる。オーソドックスなアートアニメーションを主とする従来の長編部門に対して、新しさを追求すると考えられる。
これまでの日本のアクション系、SF系長編は、アウト・オブ・コンペ部門に選出されても、コンペティション部門に進むことは稀だった。しかしContrechamp部門なら選出、そして受賞のチャンスも広がるかもしれない。1年目となる2019年は試行錯誤の時期だが、それでもアヌシーに新しい風を巻き起こすことになるだろう。