米国アカデミー賞、長編アニメーション部門ノミネートは配信映画3作品の新潮流

米国アカデミー賞長編アニメーション部門

 米国の映画芸術科学アカデミーは、1月24日に2022年の作品は対象とした第95回アカデミー賞のノミネート作品を一挙に公開した。長編アニメーション賞、短編アニメーションもそうしたひとつで、それぞれ5作品が発表されている。
 例年はアニメーション作品から音楽賞などの他部門にノミネートされるケースもあるが、今年はそうした例はなかった。アニメーションは両部門だけになっている。

 このうち長編アニメーション賞は、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』、『MARCEL THE SHELL WITH SHOES ON』、『長ぐつをはいたネコと9つの命』、『ジェイコブと海の怪物』、『私ときどきレッサーパンダ』だった。日本からノミネート入りが期待された湯浅政明監督の『犬王』は、惜しくも届かなかった。
 例年、全米公開ではないインディーズ配給の作品が1、2本候補に含まれるが、今年はYouTube公開された短編から劇場長編に進出した『MARCEL THE SHELL WITH SHOES ON』がこ中堅のの場所を占めた。配給は良質な作品をピックアップしてヒットさせること注目されているA24である。この結果5作品全てが米国作品と、近年にないラインナップになった。

[長編アニメーション賞ノミネート作品]
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
『MARCEL THE SHELL WITH SHOES ON』
『長ぐつをはいたネコと9つの命』
『ジェイコブと海の怪物』
『私ときどきレッサーパンダ』

 米国作品ばかりが並んだが、これは従来のハリウッド映画化優位ともやや違う流れになっている。2022年の特徴は、配信作品の勢いだ。5作品のうち『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』と『ジェイコブと海の怪物』はNetflix、『私ときどきレッサーパンダ』はディズニープラスの作品で、過半数を配信作品が占めている。『MARCEL~』は限定公開だから、全米公開作品は『長ぐつをはいたネコと9つの命』だけになる。
 2021年も5作品のうち『ミッチェル家とマシンの反乱』、『あの夏のルカ』が配信作品だったが、これはコロナ禍での弱い劇場興行が理由だった。今回の3作品は戦略的に配信を選択したもので、長編映画のヒットや良作はネットからも普通に誕生するようになったといえる。
 配信映画が活躍したのは、例年であれば注目が高いディズニー作品が不振だったからでもある。ディズニーから11月23日に全米公開された『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』、またディズニー配給のピクサー映画で7月1日に公開された『バズ・ライトイヤー』はアカデミーだけでなくゴールデングローブ賞にもノミネートされず、他の映画賞でも存在を感じさせない。ディズニーから高く評価されたのが配信タイトルに回されたピクサーの『私ときどきレッサーパンダ』である。
 気になる賞の行方も、この『私ときどきレッサーパンダ』と『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の一騎打ちと見ていいだろう。配信作品同士の戦いになる。

 短編アニメーション部門は、『THE BOY, THE MOLE, THE FOX AND THE HORSE』、『THE FLYING SAILOR』、『ICE MERCHANTS』、『MY YEAR OF DICKS』、『AN OSTRICH TOLD ME THE WORLD IS FAKE AND I THINK I BELIEVE IT』の5作品。手描きやストップモーションが中心で、いわゆる3D CGが含まれないラインナップとなった。また長編アニメーションとは異なり米国公開が義務づけれあれていないが、米国のほかイギリス、カナダ、オーストラリア、ポルトガルなど広い国からの作品が並んだ。
 このうち『THE BOY, THE MOLE, THE FOX AND THE HORSE』は、米国ではアップルTVが独占するこれも配信独占作品だ。

[短編アニメーション賞ノミネート作品]
『THE BOY, THE MOLE, THE FOX AND THE HORSE』
Charlie Mackesy and Matthew Freud
『THE FLYING SAILOR』
Amanda Forbis and Wendy Tilby
『ICE MERCHANTS』
João Gonzalez and Bruno Caetano
『MY YEAR OF DICKS』
Sara Gunnarsdóttir and Pamela Ribon
『AN OSTRICH TOLD ME THE WORLD IS FAKE AND I THINK I BELIEVE IT』
Lachlan Pendragon

 この後は映画芸術科学アカデミーの会員投票により、各賞の受賞が決まる。2023年3月12日にハリウッドのドルビーシアターで開催される授賞式で発表される。さらにABCなどを通じて生中継される予定だ。

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