タイでも始まったメディアミックスとイベント連動 JCSキャラクタービジネスセミナーレポート

タイにおけるキャラクタービジネス

日本のアニメやキャラクターの海外人気と共に、企業の海外進出が広がっている。近年、注目されているのは東南アジア、なかでもタイだ。2016年初めに講談社、集英社、小学館、KADOKAWA、アニメイトが協力する「アニメイト バンコク店」がオープン、そしてタイ・ジャパンエキスポ、アニメフェスティバルアジア・タイランドなど日本ポップカルチャーのイベント開催も相次ぐ。
タイの何が魅力なのか? 10月25日にグランドニッコー東京 台場で開催されたJapan Content Showcaseのセミナー「タイにおけるキャラクタービジネス」がその一端を明らかにした。セッションは2部構成、キャラクター・データバンク 代表取締役社長の陸川和男氏が、まずタイで実施した調査から、最新のタイマーケットを解説。第2部ではタイから来日したキャラクターライセンシー企業4社が、その取り組みを事例と共に紹介した。登壇したのはDream Express、True Corporation Public、Kiragames、Kantana Group Publicだ。

セミナーを通して語られたのはマーケットの可能性だ。ひとつは市場規模、そして日本コンテンツの人気、さらに現地でのキャラクタービジネスがすでにかなり高度化していることである。
人口約7000万人のタイは、アセアンの中で第4位。インドネシアの2億50000万人、フィリピンの1億人よりは少ないが、日本コンテンツの人気では両地域より遥かに高い。一方で、すでに日本のアニメ・マンガのビジネスが盛んな香港、台湾の数倍の大きさだ。

陸川氏が紹介するアンケート調査結果では、「ドラえもん」を筆頭に「ウルトラマン」「一休さん」「ドラゴンボール」「ポケモン」が認知度や人気で上位を独占する。しかもタイではキャラクターグッズに対する購入意欲が高い。30代では9割以上が購入意欲を持ち、とりわけ女性でその傾向が強いのは、日本と同様である。人気の高いグッズはぬいぐるみ、フィギュアはこれから購入したいとの意向が強かった。
タイならではの特徴はアパレルへのニーズが極めて高いことである。ここからはキャラクターそのものへの強い思い入れが分かる。陸川氏は特にバンコクをキャラクター商品の需要が高いマーケットと位置付ける。
陸川氏は、「リテールの店舗の質が高い」、「非常に洗練されていて、欧米式にコンセプトが明確」とタイのキャラクタービジネスを高く評価する。

キャラクターの高い人気は周辺ビジネスに広がる。日本でも行われるキャラクターと連動したプロモーションが高度化しており、多業態でキャンペーン広告が活発である。主要銀行が、「リラックマ」や「キティ」をカードのデザインに採用している例などがセミナーでは挙げられた。キャラクターコラボカフェも人気だという。
タイから各企業のプレゼンテーションでも、そうした傾向は顕著だった。Dream ExpressのSirikachaporn氏は自社のビジネスを360℃と説明する。アニメ・キャラクターからマルチに広がるというわけである。同社は1999年に設立、「ワンピース」「ガンダム」シリーズ、「ウルトラマン」シリーズなど多数の日本コンテンツを扱うが、3年から5年かけてプロモーションを重ねる長期的な戦略を持つ。
現在はとりわけ体験型のイベントに力をいれる。映画公開に合わせたライブや日本のメカデザイナー大河原邦男氏の招聘、ウルトラマンのステージとそのタイプも様々だ。キャラクターを広げるためにはライブイベントが重要と力説する様子が印象的だった。
タイで「ポケットモンスター」のライセンスを受けるKiragamesも同様である。アニメのテレビ放送を中心に、コンビニなどとの連携、グッズ展開なども実施する。ここでも2015年に行ったポケモンの大型イベントの成功が紹介された。

これまで日本のアニメは映像単体で海外進出し、ビジネスの広がりがないと指摘されることが多かった。しかし、タイではまさにアニメや特撮と関連ビジネスの連動が急速に広がっている。その担い手は、現地の有力企業である。彼らが消費者にダイレクトに接していることを考えれば納得できる。
もちろん日本企業の役割も大きい。キャラクターのオリジンが日本にある以上、日本からマーケティングサポートは欠かせない。日本で成功したビジネスモデルを現地企業と協力して持ち込むことも可能であろう。アニメだけない、マンガだけない、キャラクターだけでもない、新たなビジネスモデルが成長しつつあることがタイマーケットの魅力のようだ。

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