大手映画会社の東宝が劇場配給の新レーベル「TOHO NEXT」を立ち上げた。2023年12月13日の「2024年 公開予定映画 配給ラインナップ」の発表と同時に告知された。「TOHO NEXT」は、これまでの興行・上映にとらわれず、実写やアニメ、音楽、ステージ、ドキュメンタリーなどの様々なジャンルを届けるとしている。
最初の配給作品は、2024年1月5日公開の「TVシリーズ特別編集版『名探偵コネンvs. 怪盗キッド』」。4月公開の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』のテレビシリーズの関連エピソードを劇場サイズにまとめた作品だ。2021年の『名探偵コナン 緋色の不在証明』、本年の『TVシリーズ特別編集版「名探偵コナン 灰原哀物語~黒鉄のミステリートレイン~」』に続く試みで、「TOHO NEXT」の目指すものを象徴するかたちだ。同年3月8日には、「映画しまじろう『ミラクルじまの なないろカーネーション』」も配給する。
東宝はこれまでも数百スクリーン規模上映する“東宝配給”とするラインナップと別に“東宝映像事業部配給”とする作品を取り扱っていた。主に数十スクリーンから百数十スクリーンの上映規模の作品が中心となっている。
東宝映像事業部配給には、アニメ作品も多く、直近では『BLUE GIANT』、『グリッドマン ユニバース』、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』などがこれにあたる。コアファン向けの作品が多いが、過去に『プロメア』のように興行収入が15億円と東宝配給並みの実績を残した作品もある。
今回はそうした配給を「TOHO NEXT」のブランドで、より明確に打ち出す。同時にライブイベントの劇場配給、演劇やミュージカルを撮影したものの上映など、従来は映画配給と分類しにくかった作品を積極的に取り込んでいく戦略とみられる。
東宝グループは、これまでに東宝のほか、洋画を中心とする東宝東和、東和ピクチャーズの両社による配給も手がけている。「TOHO NEXT」は4つめのブランドとも言える。
映画配給会社のセカンドブランドには他社にもあり、松竹の「松竹メディア事業部」やKADOKAWAの「角川Animation」などがこれにあたる。映画ファンのニーズの多様化と、それに合わせた作品の供給体制の変化が表れている。
国内の映画配給では東宝グループが高いシェアを握る一方で、近年は他にも新しい動きが見られる。特にアニメ分野では、アニプレックスやバンダイナムコフィルムワークス、ブシロードなど、アニメ事業者が自ら配給する例も少なくない。「TOHO NEXT」はこうした事業者のライバルにもなりそうだ。