KADOKAWAが、デジタル出版を通じてヨーロッパへのライトノベル展開で一挙に攻勢をかける。KADOKAWAは2023年10月、米国現地法人J-Novel Clubがドイツ・ベルリンに完全子会社のJNC Nina(ニーナ)を設立したことを明らかにした。
この10月よりドイツ語とフランス語でヨーロッパ地域に向けて、日本のライトノベル翻訳版のデジタル・サブスクリプションサービスを開始した。ヨーロッパでのライトノベル市場の拡大を目指す。
KADOKAWAは近年、グループの事業グローバル化を強力に推し進めている。なかでもアジアは中国や台湾、マレーシアといった地域を中心に成功を収めている。さらに北米でもYenPressやJ-Novel Clubといった現地有力企業を相次いで買収し、事業基盤強化が進んだ。今回はさらにエンタテイメントの巨大市場のひとつヨーロッパにも本格攻勢をかける。
近年、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国で、日本マンガ市場の急成長していることが注目されている。北米では日本マンガ市場の拡大にともなって、ライトノベルの翻訳出版も大きく売上げを伸ばした。そこでKADOKAWAは、ヨーロッパでも北米と同じようにライトノベルの潜在市場があると判断した。
ヨーロッパ進出にあたっては、北米のライトノベル市場の開拓と拡大で成功を収めた現地子会社J-Novel Clubのビジネスモデルを導入する。J-Novel Clubは 2016 年に設立され、2021年4月にKADOKAWAの買収により連結子会社としてグループに加わった。
J-Novel ClubはKADOKAWA作品だけでなく、日本の多くの出版社のライトノベル作品を取り扱っている。英語版ライトノベルのプラットフォームとして利用され、ライトノベルやマンガファンのコミュニティーとしても機能している。
プラットフォームでは作品をまず1話単位でサブスクリプションサービスとして配信、いち早く英語でファンに届ける。その後、一冊にまとまった電子書籍スタイルで主要なオンラインストアを通じて販売する。この事業モデルが成功して、売上を伸ばしている。
JNC Ninaは北米と同様のスタイルで、ドイツ語版とフランス語版のデジタル出版・サブスクリプションプラットフォームの展開をする。ライトノベルを中心に、さらにマンガも取り扱う予定だ。
KADOKAWAが出版でのヨーロッパ進出にあたってマンガでなくライトノベルを中心にするのは、自社の有力マンガ作品の多くがすでに現地の翻訳出版社にライセンス提供されているとの理由もありそうだ。長年のパートナーである現地の出版社との競合を避けたいとの意図もあるだろう。
新興分野であるライトノベルであれば、市場は未開拓で現地出版社との競合は薄い。またヨーロッパはデジタル出版の普及が遅れており、デジタルであればむしろ市場の開拓者と積極的な進出が可能となる。
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