エンタテインメント大手KADOKAWAは、2024年1月25日に欧州のエンタテインメントグループのメディア・パルティシパシオ(Media-Participations Paris)、そのグループ出版社エディシオン・デュプイ(Editions Dupuis S.A.)との間で合弁会社設立の合意をした。
新会社はエディシオン・デュプイのアジアのマンガ・コミックス出版レーベルのVega(ヴェガ)の事業を分社化し、KADOKAWAがその株式の51%を取得する。エディシオン・デュプイも49%の株式を引き続き保有する。新会社は2024年5月以降に設立予定で、パリに本社を置く。まずはフランス語圏に向けた日本マンガ・ライトノベルと韓国作品の翻訳出版をする。
エディシオン・デュプイは、売上規模でフランス第3位の大手出版社だ。フランス・ベルギーを拠点とするエディシオン・デュプイは100年以上の歴史を持ち、コミック出版でも欧州を代表する。『スマーフ』や『ラッキー・ルーク』、『ガストン・ラガフ』といった人気作品を多数輩出してきた。
しかし、フランスで急拡大する日本マンガの翻訳出版では出遅れていた。この分野を手がけるVegaレーベルもスタートは2021年である。今回、レーベルをKADOKAWAとの共同出資会社に一新することで、同分野でのビジネス拡大を目指すことになる。
新会社はVegaレーベルを通じて、日本マンガとライトノベル、それに韓国作品を刊行する。事業展開にあたっては、メディア・パルティシパシオの出版流通インフラや販売・プロモーションノウハウを活用する。
日本作品はKADOKAWA作品だけにとどまらず、幅広い取り扱い出版社からの取り扱いを目指すとしている。またヨーロッパで生まれた作品のコミカライズなども目指す。新会社は特定の分野とどまらない方向と見られる。
さらに将来的には、翻訳出版以外のビジネスも視野に入れる。両社によるデジタルマンガや小説のプラットフォーム運営などでの提携関係拡大も検討もする。
ヨーロッパ市場における出遅れは、KADOKAWAも同様だ。翻訳出版のライセンス輸出の実績の高いアジア、北米に較べると、KADKAWAのヨーロッパ事業は古くから現地に進出する小学館・集英社に較べて弱い。それがヨーロッパの大手出版社と手を組む理由だ。
KADOKAWAはフランスとフランス語圏市場は100年以上のバンド・デシネがあり、世界有数の市場だとしている。さらに日本マンガの需要が活発で大きな成長余地があるとする。今回のフランス語圏への本格進出の背景となっている。
KADOKAWAは昨年10月、ドイツ・ベルリンにグループ会社が日本のライトノベル翻訳のデジタル・サブスクリプションサービス会社JNC Nina(ニーナ)を設立している。現地直接進出が活発な北米、アジアに続き、ヨーロッパ市場の進出にも本腰だ。