北米で日本マンガ翻訳出版でトップを走るエンタテイメント会社VIZメディアが、2023年5月8日に新たなマンガ閲覧アプリ「Viz Manga」をリリースした。
アプリの目玉のひとつは日米同時連載である。人気作品の最新サービスエピソードを日本の連載と並行して、英語でファンに届ける。スタート時には『古見さんは、コミュ症です。』、『ゾム100 死者のバケットリスト』、『MAO』などを中心に十数タイトルを用意した。これらは誰でも無料で読むことが出来る。
さらに「Viz Mang」にはサブスクリプション(定額課金型)のサービスがある。月1.99ドルで1万チャプター以上が用意されたライブラリーが読み放題になる。Viz Mangaは小学館、集英社、小学館集英社プロダションが出資する米国現地法人で、数多くの人気タイトルの英語出版を手がけている。ライブラリーには、その中から『らんま1/2』、『犬夜叉』といった高橋留美子作品、伊藤潤二作品、『今際の国のアリス』などの人気作が並ぶ。
VIZメディアでは、今後はさらに作品のラインアップを増強する。また現在は米国とカナダのみのサービスだが、利用可能地域も拡大する方針だ。
VIZメディアはすでに、「Viz Manga」と同じ様な仕組みを持ったマンガアプリ「Shonen Jump」も運営している。またこれとは別に日本から集英社・少年ジャンプ編集部が運営するグローバル向けのマンガアプリ「Manga+」も北米で展開されている。
そうしたなかで「Viz Manga」の特徴は、これまでデジタルでの海外展開が弱かった小学館のタイトルを広くカバーしていることだ。サイマル配信では、小学館の雑誌で連載している作品が中心になっている。同時に「Shonen Jump」や「Manga+」ではカバーされていない集英社の作品も取り扱う。
5月初めには、別の動きもあった。講談社が日本マンガアプリの「K MANGA」を「Viz Manga」とほぼ同じ時期にリリースした。
これで小学館、集英社、講談社と大手マンガ出版のデジタルマンガが、同時配信も含めて北米でいっきに拡大した。北米のマンガ、そして米国産コミックスのデジタル市場は、紙出版の1/10程度とされているが、日本マンガに関しては北米でのデジタル、アプリサービスの流れが一挙に加速する体制が整う。
先行する「Manga+」、そして「Viz Manga」、講談社の「K MANGA」にはいくつか共通する特徴がある。ひとつは日本と同時連載(サイマル)に力をいれていることだ。さらにこれらの最新エピソードは期限を区切って誰でも無料で読むことが出来る。「Viz Manga」や「K MANGA」では、そうしたユーザーを豊富な有料作品のアーカイブに誘導する流れを作る。
日本の雑誌連載のビジネスモデルとは異なり、むしろ日本のテレビアニメと似た戦略に見える。最新作は放送や配信を使い無料で提供するが、最終的な利益はそこから広がる様々なビジネスにつながっていくと共通する。マンガアプリでは、それがデジタルマンガのアーカイブになる。
これらは紙とは異なるデジタルならのビジネスを目指している面が強い。同時にいまだ勢いのネット上の海賊版に対抗する狙いもあるだろう。