中国SF小説「三体」アニメ化へ ビリビリが権利獲得、ゲームやコミックにも

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 中国のアニメ事業大手のビリビリは、同国のSF作家・劉慈欣の代表作『三体』のアニメ化に動き出す。2019年6月27日、ビリビリは自社10周年記念セレモニーで、『三体』3部作アニメ化に関する独占的な権利を獲得したことを明らかにした。
 ビリビリはアニメ化だけでなく、スマホアプリゲーム、映画、コミック、オーディオドラマなど作品から派生する様々な権利を手にする。今回の発表は権利獲得についてのみで、アニメのリリース形態や時期、スタッフなどは明らかにされていない。これから企画を練りあげていくことになりそうだ。

 劉慈欣は1963年生まれ。SF雑誌に掲載した『三体』で一躍知名度をあげた。世界で注目を浴びる中国現代SFを代表する作家だ。2015年には、アジアから初めて米国SF界の頂上とされるヒューゴー賞を受賞している。いま最も知られた中国SF作家と言っていいだろう。劉慈欣は今年中国で大ヒットしたSF映画『流浪地球』の原作者でもある。そうした盛り上がりも、今回の権利獲得につながったと見ていいだろう。
 『三体』は、『三体』『黒暗森林』『死神永生』の3つのストーリーで構成される。惑星・三体の異星人による地球侵略を軸に壮大なドラマが描かれる。日本でも2019年中に早川書房より翻訳出版が予定されている。今回は映像配信プラットフォーム、ゲームなどで急成長する中国企業のビリビリがこれにアニメで挑戦する。

 ビリビリは2010年にユーザー投稿型の映像プラットフォームとして設立。当初は日本アニメやユーザー投稿動画の人気で急成長した。とりわけ日本アニメに積極的で、深夜アニメなどのコアファン向けのタイトルの多くの配信権を獲得してきた。
 その後、スマホアプリゲームやイベント、アニメ製作などに進出した。なかでも日本からライセスを受けたゲーム『Fate/Grand Order』は売上げの核となる主力タイトルだ。2018年3月には米国NASDAQに上場するなど事業拡大に意欲的である。

 一方で、さらなる事業展開として、IP(知的財産)ビジネスを掲げる。他社の作品の配給権・配信権を獲得するよりも、自身が権利を持つ作品のほうが長期的に収益の期待できるからだ。
 また中国政府がインターネットやモバイルゲームを通じた他国作品流入の規制強化に動いていることもあり、現在は自社オリジナル作品の製作を進めている。自社製作アニメも増加傾向である。
 そうしたなかでの『三体』のアニメ化は、ビリビリのキラーコンテンツになる可能性がある。中国国内だけでなく、海外での高い知名度でグローバルな展開が期待出来るからだ。作品が実際に登場するのはしばらく先になりそうだが、ビリビリにとってはターニングポイントとなりそうだ。

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