アニメ制作大手トムス・エンタテインメントが従業員基本給30%引き上げ、新卒月給26万円

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 人材不足が続きインフレも強まる中で、企業が従業員給与を引き上げる動きが昨年から広がっている。そうした傾向にアニメ業界も無縁でないようだ。
 『名探偵コナン』や『ルパン三世』、『アンパンマン』などでお馴染みのアニメーション制作大手のトムス・エンタテインメントは2023年4月から新報酬制度を導入し、従業員給与を大幅に引き上げることを明らかにした。

 新報酬制度では前払割増賃金を廃止し、賞与の一部を基本給に組み込むことで、賃金の基本給比率を高める。この施策により従業員の基本給は平均で、約30%程度アップする。
 また新卒初任給は21万円から26万円と約24%と引き上げられる。一般財団法人労務行政研究所の調べでは、2022年の東証プライム上場企業165社の大卒新入社員の初任給平均は21万6637 円だが、これを大きく上回る。

 トムス・エンタテインメントは新報酬制度を通じ、従業員の収入をより安定させるとともに、採用競争力の強化を目指すとする。また日本アニメ産業の持続的発展を目指には、アニメの制作環境やアニメビジネスの構造的問題などさまざまな課題の解決に取り組むことが必要と指摘。社員が高い意欲で仕事に取り組める環境づくりを進めるとしている。
 トムス・エンタテインメントの従業員は2022年3月末段階で単体238名である。新卒採用は制作・営業・事務が中心で、アニメーターについては2021年よりスタートした給付型奨学金の新人育成プログラム(現・TMS作画アカデミー)にて人材確保を目指している。

 エンタメ業界ではここ一年ほどで任天堂、セガ、スクウェア・エニックス、マーベラス、バンダイナムコグループなどゲーム関連企業での初任給の大幅引き上げが相次いでいる。人材獲得競争が激化していることに加えて、世界のエンタメ業界から見劣りする日本の賃金水準是正も視野に入っている。
 トムス・エンタテインメントはセガサミーのグループ会社でもあり、こうした動向にいち早く対応したとみられる。こうした動きが今後、アニメ業界に広がるかも注視される。

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