2022年世界映画興収 北米9600億円、中国5700億円、日本が第3位

映画

■北米市場トップは『トップガン マーヴェリック』 急回復もコロナ前に及ばず

 2023年の新しい年が始まると共に、2022年の世界主要マーケットの映画興行の年間売上高も見えてきた。引き続き世界各地で新型コロナ感染症の影響があるなかで、北米が73億3800万ドル(約9600億円)と前年比64%増となり再び世界最大の市場に浮上した。
 ウィズコロナの潮流が広がり映画館が通常営業にほぼ戻ってきたことが大きい。映画公開スケジュールも正常化した。22年の北米最大のヒットは5月27日全米公開の『トップガン マーヴェリック』、同作は北米だけで7億1800万ドル(約940億円)、全世界で14億8800万ドル(約1940億円)を叩き出した。北米歴代でも第5位にあたるビッグヒットだった。2位は『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の4億3600万ドル(約570億円)、3位は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の4億1100万ドル(約540億円)とヒーロー作品が引き続き人気を集めている。
 アニメーション映画では『ミニオンズ フィーバー』の3億6900万ドル(約480億円)が最高、ピクサーの『バズ・ライトイヤー』は1億1800万ドル(約150億円)だったが、ディズニーの『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』は3600万ドル(約50億円)と厳しい結果になった。
 それでも年間興収はコロナ前である2019年の113億6300万ドル(1兆4800億円)を大きく下回る。2009年から2019年まで続いた100億ドルの大台を超えられていない。2023年は100億ドル突破できるかが大きな目安となりそうだ。

■コロナ関連影響大の中国市場は国産映画が中心

 一方で2021年に初めて世界最大市場となった中国(本土)は、22年は前年比36%と大きな落ち込みで約300億6700万元(約5700億円)となった。世界最大市場の座を再び北米の引き渡すことになった。
 21年の厳格なコロナ感染症拡大阻止の対策で映画館の休止が大規模に実施されたほか、12月以降は対策緩和で感染症が急速に広がったことが動員に影響している。またこうした環境のなかで公開タイトル数も大きく減少している。
 最も観客を集めたのは、朝鮮戦争を舞台にした続編映画『長津湖 水門橋決戦』の40億700万元(約770億円)。2位はSFコメディの『独行月球』の31億500万元(約600億円)、3位もコメディで『這介殺手不太冷静』の26億2900万元(約500億円)だった。上位6作品までを中国国産映画が占めた。興行収入における国産比率は84.45%と21年の84.9%に続き高い水準となった。
 外国映画では『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の10億5900万元(約200億円)が最高。また23年も引き続き上映中の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の9億5300万元(約180億円)が続く。日本映画では『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の1億7800万元(約34億円)がトップであった。
 アニメーション映画でも中国産が強さを発揮した。人気シリーズの最新作『熊出没 バック・トゥ・アース大作戦』が9億7800万元(約185億円)でトップ、『新封神演義・楊戩』の5億5600万元(約105億円)が続いた。海外アニメーションではドリームワークスの『バッドガイズ』の3億3500万ドル(約63億円)、『ミニオンズ フィーバー』は2億3800万ドル(約45億円)がヒット作だった。

■日本市場は引き続き世界第3位、ロシア市場は急減

 日本の2022年の詳細な年間興行収入はまだ発表されていない。12月初旬の段階で2100億円前後が見込まれていたが、『すずめの戸締まり』、『THE FIRST SLAM DUNK』の大型ヒットもあり上振れする可能性が高そうだ。21年比で3割程度増加することになり、洋画は数字を大きく落としているがマーケットの大きさではコロナ前の2000億円台に戻ってくる。

 英国の年間興行収入が11億200万ドル(約1500億円)、フランスが9億3800万ドル(約1200億円)になるため日本は21年に続き、世界第3位の市場となる。
 4位英国は前年比54%増と前年並みだった5位フランスを大きく突き放した。また6位にはロシア、韓国などを超えたインドが6億1300万ドル(約800億円)で前年8位から浮上。一方、ウクライナ戦争で欧米の映画が上映できなくなったロシアは前年の5位から11位に落ちた。7位の韓国は6億ドル(約790億円)、8位はオーストラリア5億8000万ド(約760億円)、9位はドイツの5億4000万ドル(約710億円)、10位はメキシコの5億1000万ドル(約670億円)だった。

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