2021年北米映画興行は5100億円、中国は8600億円 前年比増も19年を下回る

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 2022年がスタートすると共に、北米(米国・カナダ)と中国の世界2大映画市場の2021年の興行収入も出揃った。20年は両国とも新型コロナ感染症対策による映画館の営業自粛で大打撃を受けて前年比で大幅減となったが、2021年は回復基調に入っている。
 映画興行情報のBOX OFFICE MOJOによれば、2021年の一年間の北米興行収入は44億6900万ドル(約5100億円)だった。前年の21億300万ドル対比で倍以上となった。春頃から映画館再開や通常営業が増えたことが後押しした。
 それでも2019年の113億2000万ドルからは60%以上下回る水準と興行全体が依然、厳しい状況にある。21年前半の営業自粛や有力作品の公開延期、さらに新作映画の配信が強まっていることも理由にありそうだ。
 中国市場のコロナの影響は北米より小さかった。2020年こそ204億元(約3600億円)まで落ち込んだが、人民日報によれば21年は472億元と2.3倍となった。19年(642億元)対比73%(23%減)と北米より回復力が大きかった。この結果2年連続で中国が世界最大の映画市場を維持することになった。

 引き続き厳しさも見えた北米市場だが、21年の最後12月に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が明るいニュースとなっている。1月2日現在まで北米だけで興行収入が6億ドル(約700億円)を突破。歴代トップ10に喰い込む空前の大ヒットになっている。
 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、ソニー・ピクチャーズ配給映画では歴代興行収入1位であった。ソニー・ピクチャーズは第3位『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2億1000万ドル)、9位『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(1億2000万ドル)、ベスト10に3作品を送り込んだ。厳しい環境ながらも存在感を発揮した。
 業界シェア1位を維持してきたウォルト・ディズニーは2位『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2億2000万ドル)、4位『ブラック・ウィドウ』(1億8000万ドル)、6位『エターナル』(1億6000万ドル)とベスト10は3本にとどまっている。これまで上位常連のアニメーション映画で配信シフトが強まり、劇場と配信の両方での収益化を目指す戦略が影響していそうだ。
 苦戦したのはワーナー・ブラザース映画で、ベスト10には一作品も入らず12位に『ゴジラ vsコング』(9900万ドル)、13位『DUNE/デューン 砂の惑星』(9300万ドル)となった。相次ぐ公開予定の延期に加えて、鳴り物入りの大作『DUNE』が十分な結果を残せなかった。

 2021年年間興行ランキングには、日本作品も名前を連ねている。なかでもアニメが強く、「ポケモン」以来21年ぶりに週末ランキングトップを獲得した『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』がトータル4700万ドルで34位、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』(970万ドル)が68位、『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』(105万ドル)で123位。4Kリマスター版の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』も37万ドルで165位にランキングしている。
 実写では27スクリーンと小規模ながら濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が現在まで32万ドル。米国アカデミー賞の各部門ノミネート・受賞が期待され、今後伸びそうだ。

 中国の2021年1位は朝鮮戦争での中国人民義勇軍の活躍を描いた『長津湖』が57億7000万元(1040億円)。21年に世界で最もヒットした映画だ。第2位は‎女性コメディアンが自身の母親を題材にしたコメディ映画『你好,李焕英』(54億1000万元)、第3位は日本が舞台になったことでも話題となった『唐人街探偵 東京MISSION』 (45億2000万元)だった。
 海外映画は振るわなかった。『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』が13億9000万元、『ゴジラ vsコング』が12億3000万元と大きなヒットになったが他に目立った作品が少なく、また『シャン・チー』など中国公開されない大作も少なくなかった。
 日本映画は『STAND BY ME ドラえもん 2』の2億7700万元が最高、『名探偵コナン 緋色の弾丸』の2億1600万元が続く。第3位にSF作品の『HELLO WORLD』1億3600万元と、引き続きアニメが強さを発揮した。実写は日本公開から13年ぶりに公開された『おくりびと』が6600万元のスマッシュヒットとなった。

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