北米、中国の2023年映画興行は同傾向 前年大きく上回るがコロナ禍前に及ばず

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 北米と中国、映画興行の世界二大市場で2023年の年間興行収入が出揃った。北米は約89億500万ドル(約1255億円)で前年同期比20%増(BOX Office Mojo数字)、中国は約549億元(約1100億円)前年比83%増で動員数12億9900万人(中国国家電影局発表)だった。
 伸び率では中国が高かったが、総額では2022年に続き北米が上回り、世界最大の映画市場の座を維持した。ただ市場動向はいずれもよく似ている。コロナ禍明けで劇場に観客は戻り大きく伸びたが、コロナ禍前に及んでいない。

 北米の伸び率は21年が112%増、22年が64%増と3年連続の高成長である。しかし2023年の金額は19年(113億ドル)対比78%に留まる。さらに2009年から19年まで11年連続で100憶ドルを突破していたことを考えれば、回復力は十分とは言えない。
 中国も2018年、19年がいずれも600億元越え。それまでは右肩あがりに成長してきたことを考えれば、停滞感は拭えない。

 北米の不振は、コロナ禍の影響だけでは片づけられない。2023年は『バービー』(興収6億3000万ドル)と『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(5億7000万ドル)といった記録的なヒットがあった一方で、いくつもの大作が期待されたヒットに達しなかったためだ。
 製作費2億ドルとされた『ウィッシュ』は国内興収6000万ドルとなり、『ザ・フラッシュ』や『マーベルズ』『アクアマン 失われた王国』といったスーパーヒーロー作品が期待ほど伸びなかった。興行の落ち込み以上に製作予算の大きかった作品が芳しくなかったことは、各映画会社への利益面での影響も大きいはずだ。
 なかでも不振が目立ったディズニーは、全作品の国内年間興行収入19億ドルがユニバーサルの19億4000万ドルに追い抜かれた。ディズニーがトップでなくなるのは、2016年以来7年ぶりだ。

 一方の中国市場は、国産映画の勢いが引き続き強まっている。かつては国産映画と海外映画で売上高は半分ずつとされたが、2023年は全体の約84%が国産映画だ。最もヒットした『満江紅』の興行収入は45億4000万元、日本円で900億円を超える。南宋時代を舞台にした歴史ドラマである。2位は大ヒットSF映画の続編『流浪地球2』(40億2000万元)、3位は『孤注一擲』(38億4000万元)だ。こちらはオンライン詐欺に巻き込まれた主人公の脱出劇を描く社会派ドラマ。ベスト10は全て中国国産映画に占められている。
 米国映画は勢いがない。最大ヒットはシリーズが長年愛されている『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』、全体で12位で興収9億8000万元、17位『MEG ザ・モンスターズ2』8億5000万元、さらに24位の『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が6億5000万元で続く。
 北米1位の『バービー』は2億5000万元で46位、同2位の『ザ・スーパーマリオブラザース』は1億7000万元で59位、中国でヒットする米国映画の傾向は本国とかなり異なる。

 アニメーション映画でも、中国では国産が勢いを増している。23年夏の話題作『長安三万里』は興収18億2000万元、人気シリーズの最新作『熊出没 伴我熊芯』は14億9000万元と桁違いの数字だ。さら9億1000万元の『深海』までトップ3を国内産アニメーションが占めた。米国作品では『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が最高で3億5000万元、『パウ・パトロールザ・マイティ・ムービー』が1億3000万元、『ウィッシュ』は4000万元と冴えない。
 こうしたなかで日本のアニメ映画は堅調だった。『すずめの戸締まり』は8億元で中国における日本映画興行記録を塗り替えるヒットになった。全体では19位だが、海外映画では3位でハリウッド大作の多くを超え、海外アニメーションではトップである。さらに『THE FIRST SLAM DUNK』が海外アニメーション2位となる。このほか『天空の城ラピュタ』と『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が1億3000万ドル、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』1億1000万元、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』が1億元だった。

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