「ソードアート・オンライン」海外に広がる 劇場版世界公開決定に、ハリウッド実写ドラマ企画浮上


■ 劇場版アニメ世界公開に、梶浦由記のLAライヴが決定

川原磔の小説『ソードアート・オンライン』が、今後、ますます世界に広がりそうだ。2017年春の『劇場版 ソードアート・オンライン ‐オーディナル・スケール‐』の国内公開を軸に大型プロジェクトが相次いでいる。
まず7月2日に、カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された北米最大の日本アニメイベントAnime Expo 2016の会場で本作の世界公開が発表された。公開規模は明らかではないが、アジア以外の地域で日本とほぼ時差がなく、日本のアニメを劇場公開するのは異例である。同時にシリーズの音楽を担当する梶浦由記が本作をテーマにした単独コンサートを2017年1月に開催することも告知された。会場となるドルビーシアターは、米国アカデミー賞の授賞式の開催でも知られる名門で、大きな話題を呼ぶことは間違いない。

8月3日には、さらにビッグなニュースも飛び出した。小説『ソードアート・オンライン』を原作にした実写ドラマ企画が米国で進行中だという。企画に携わるのは、カリフォルニアのエンタテイメント企業スカイダンス・メディア(Skydance Media)である。同社は映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』や『ターミネーター:新起動/ジェニシス』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のプロデュースなどで知られている。映画だけでなく、テレビ番組の大型シリーズでも力を発揮する。
すでにパイロット版の脚本を、レータ・カログリディスが担当することが決まっている。『アバター』や『シャッター アイランド』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』を手がけた大物である。テレビ放送や映像配信などの情報は明らかにされていないが、今後の展開を期待させるのに十分だろう。

■ 原作小説は海外650万部、米国でテレビ放送も

深夜アニメ発の作品の海外での大きな展開は、日本のファンには驚きを与えるかもしれない。しかし、日本でも人気の高い本作は、海外のアニメファンの間ではそれをさらに超えるほどの盛り上がりを見せている。原作小説は既刊17巻が海外で累計650万部売れている。ライトノベルの市場が日本ほど確立されていないなかで異例の規模である。
2015年からはCATVのカートゥーンネットワーク/アダルトスイムでもテレビ放送されている。日本アニメがかつてほどテレビ放送されなくなっているなかでこちらも異例だ。アダルトスイムのピックアップする日本作品は、アニメファン以外の映像ファンにもアプローチできるもので、『攻殻機動隊S.A.C.』や『カウボーイビバップ』などが人気を博す。『ソードアート・オンライン』もコアファンと一般層の間に位置すると見られているようだ。アダルトスイムと同様に一般層にも受け入れられる作品との方針を持つNetflixで配信されていることからも、北米における本作の位置が読み取れる。実写化企画もこれを踏まえてと言えるだろう。

■ KADOKAWA/Yen Pressの動きも注目

しかし、こうした人気も、ファンの熱意だけで実現したものではない。製作者サイドは海外に受ける作品として、当初より人気をさらに盛り上げる巧みな海外プロモーションをしてきた。配信ウィンドウの拡大や海外イベントでの積極的な露出、日本と同時の情報公開などだ。
そうしたプロモーション戦略は、劇場版ではさらに大きくなりそうだ。特に注目されるのは、原作小説とコミカライズである。英語版の原作小説とコミカライズは、いずれも日本作品の翻訳出版で定評のあるYen Pressから刊行されている。Yen Pressは国内の電撃文庫で『ソードアート・オンライン』を刊行するKADOKAWAに今年4月に買収されたばかりである。これで原作とアニメの連動がこれまでより容易になる。
人気アニメの劇場化、そして原作小説・コミカライズの同時展開、さらにライヴイベント(梶原由記のNY単独公演)の実施、実写企画の同時進行は、日本のアニメ業界が長年国内で築き上げたエンタテインメントビジネスの成功モデルである。これをグローバル規模に拡大するとの意図が、『ソードアート・オンライン』の一連の動きから窺える。
コアファン向けのアニメビジネスの海外での拡大、新たなビジネスモデルになるのか。『ソードアート・オンライン』の劇場映画、実写化企画は試金石となる。

アニメ『ソードアート・オンライン』英語版 公式サイト http://sao-movie.net/us/

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