米国の映画芸術科学アカデミーは第89回アカデミー賞の短編アニメーション部門の選考対象を10本にまで絞り込み、2016年11月23日(現地時間)に発表した。ディズニーやピクサーの大手スタジオ、海外、学生などからヴァラエティ豊かな作品が並んだ。
映画芸術科学アカデミーはこれまでに69本を選考対象作品として挙げていたが、ノミネートに先立ってこれを予備審査として厳選した。今後は映画芸術科学アカデミーのアニメーション部門のメンバーが10作品を全て鑑賞したうえで投票し、2017年1月24日のノミネート5作品を発表する。さらにそこから投票を経て、2月26日に短編アニメーション賞が選ばれる。
長編部門以上に多彩な作品が並ぶ短編部門だが選出作品には傾向があり、今回もそれを踏襲している。まずはディズニーとピクサーの短編である。両スタジオは新進のクリエイターに短編を制作させ、長編映画と同時上映する習慣を持っている。そのなかから候補作がしばしば選ばれる。
今回はピクサー・アニメーションスタジオからアラン・バリラーロ監督の『ひな鳥の冒険』、ウォルト・ディズニー アニメーションスタジオからは日系のレオ・マツダ監督による『Inner Workings』がリストに挙げられた。『ひな鳥の冒険』はCGアニメーションで海辺で遊ぶ小鳥を丁寧に描いた。『Inner Workings』は長編映画では見られない観念的なコンセプトが特徴である。
『Borrowed Time』のAndrew Coats、Lou Hamou-Lhadj共同監督は、いずれもピクサー出身。スタジオから独立し、Quorumフィルムとして本作を制作している。ファミリー向けのピクサーよりダークな内容が持ち味となっている。ピクサーから独立して第87回に『ダム・キーパー』がノミネートされたトンコハウスのロバート・コンドウ・堤大介の両監督を彷彿させるキャリアだ。
『Pearl』が候補作となったパトリック・オズボーン監督も、似たキャリアを持つ。『ボルト』や『シュガーラッシュ』で活躍したウォルト・ディズニースタジオ出身のアニメーターである。オズボーン監督は2年前の2014年に『Feast』ですでに短編アニメーション賞に輝いているが、これはディズニースタジオの作品であった。今回はスタジオから独立し、自らのEvil Eyeピクチャーで制作する。大手スタジオから独立して、自身の作品を手がける流れがハリウッドにはあるようだ。
また製作で協力するGoogle スポットライト ストーリはスマートフォンで楽しめる360°全方位の映像作品を提供している。話題の多い作品だ。
海外から毎年常連のNFB(カナダ国立映画庁:National Film Board of Canada)から、今年も2作品がリストアップされている。『Blind Vaysha』のセオドア・ウシェフ監督は、実力派として短編アニメーションではよく知られた存在だ。
フランク・ディオン監督の『The Head Vanishes』にも、アルテフランス映画部門と共にNFBは製作に参加する。こちらは今年のアヌシー国際アニメーション映画祭の短編アニメーション部門のグランプリ作品でもある。
学生作品からは、南カリフォルニア大学のAlicja Jasina監督の『Once upon a Line』が選ばれている。すでに大学院は卒業しているが、本作で米国学生アカデミー賞で最優秀作品に選ばれている。
■ 『Blind Vaysha』
セオドア・ウシェフ監督 (NFB)
■ 『Borrowed Time』
Andrew Coats、Lou Hamou-Lhadj共同監督 (Quorumフィルム)
■ 『Happy End』
ヤン・サスカ監督 (プラハ芸術アカデミー映像学部)
■ 『The Head Vanishes』
フランク・ディオン監督(Papy3Dプロダクション、NFB、アルテフランス映画部門)
■ 『Inner Workings』
レオ・マツダ監督 (ウォルト・ディズニー アニメーションスタジオ)
■ 『Once upon a Line』
Alicja Jasina監督 (南カリフォルニア大学)
■ 『Pear Cider and Cigarettes』
ロバート・バレー監督 (Massive Swerveスタジオ、Passionピクチャー・アニメーション)
■ 『Pearl』
パトリック・オズボーン監督 (Google Spotlight Stories、Evil Eyeピクチャー)
■ 『ひな鳥の冒険』
アラン・バリラーロ監督 (ピクサー・アニメーションスタジオ)
■ 『Sous Tes Doigts (Under Your Fingers)』
Marie-Christine Courtès監督 (Vivement Lundi!、Novanima)