1980年代のアニメスタジオを舞台にした異色のホラー小説が、12月中旬に毎日新聞出版から刊行される。ミューノベルのレーベルで発売される『呪・アニメ -アニメ・スタジオの怪談-』だ。著者は「世にも奇妙な物語」シリーズの脚本やウルトラシリーズ、スーパー戦隊シリーズの脚本でもお馴染みの武上純希、さらにイラストは怪奇マンガの大家である伊藤潤二が手がける強力な布陣だ。
作品の背景になるのは、アニメが急成長した1980年代。映画業界で仕事を見つけられなかった主人公の省三は、下請け専門のアニメスタジオに就職する。ところがそこで手がけたアニメに、写ってはいけない何かが写っていると噂が広まりだし……。それを観たものに呪いがかかるようになる。省三は呪いのアニメの謎を追い始める。
昨今は、アニメーション制作現場を描いたテレビアニメシリーズ『SHIROBAKO』や辻村深月の小説『ハケンアニメ!』など、アニメ業界を取り上げたエンタテイメントが少なくない。アニメの現場が、受け手に対しても身近になっているのかもしれない。
しかし、アニメをテーマにしたホラー、呪いのテレビアニメと、そのストーリーはかなり大胆な異色作である。アニメファンからも関心を集めそうだ。
本書を刊行する「μNOVEL(ミューノベル)」は、2015年10月に毎日新聞出版が大人向けの新しいライトノベルを掲げてスタートしたレーベルである。毎日新聞出版の頭文字“M”をギリシャ文字で読んだ“ミュー”に由来し、ギリシャ神話の文芸を司る女神たちのミューズにもつなげている。
読者層が拡大するライトノベルの中でも、30代から40代の大人層をターゲットにしている。80年代という『呪・アニメ』の設定も、読者がアニメをよく観ていた子ども時代を意識しているようだ。ミューノベルからは、このほか菊地秀行の「妖獣都市」シリーズなどが刊行されている。