アニメ製作会社のIGポートは、2018年11月に子会社ジーベックの映像制作事業のサンライズへの譲渡を発表し、アニメ業界に少なからぬ驚きを与えた。大手スタジオ間の事業譲渡は、これまでにあまり例がなかったからだ。
その際に後日詳細が定まり次第告知するとしていた譲渡価格が3億円となったとし、このほど明らかにされた。2019年4月1日付で決済され、該当事業は同日付でサンライズに移管される。譲渡に伴う資産は差し入れ保証金1800万円、流動資産100万円で合計1900万円になる。また負債はなかった。
これまでにジーベックが持つ過去作品の著作権は引き続きIGポートが保有、仕上部門はグループ会社のシグナル・エムディへ移管すると発表している。また撮影部門と『蒼穹のファフナー THE BEYOND』を制作する練馬区のスタジオは、やはり同じグループのプロダクション I.Gに移管し、IG zwei として事業継続することを明らかにしている。
サンライズはジーベックの本社がある西東京市の映像制作機能のみを得たかたちだ。ジーベックは2018年5月期で17億8500万円の売上があった。しかし今回は譲渡資産がほとんどない、また長年最終赤字が続いていたことから譲渡価額は比較的押さえられた価額になったとみられる。
サンライズにとっては、リスクの高い事業買収にもみえる。しかし制作の現場の不足が深刻な現在のアニメ業界では、老舗で多数の元請制作をしてきたジーベックの持つ制作機能やネットワークに大きな価値がある。
3月には事業を引き継ぐ新会社の株式会社SUNRISE BEYONDを設立した。サンライズやその子会社バンダイナムコピクチャーズと同様に、企画・製作、プロデュース、作品の運用を事業に掲げる。サンライズ式の事業ノウハウを導入することで、旧ジーベックの制作事業の立て直しと、利益化を目指すことになる。
ジーベックは、1995年設立。長年、プロダクション I.Gのグループ会社として多くの作品を制作してきた。『機動戦艦ナデシコ』、『To LOVEる -とらぶる-』や『蒼穹のファフナー』などの人気アニメも多く世に届けてきた。
しかし近年は制作コストの上昇などがある一方で、経営体質の変革などに乗り遅れていた。IGポートは、事業と雇用を継続するためには、サンライズのもとで経営資源を有効活用できるとして、事業譲渡するとしている。
IGポートは連結売上高が大きく減少するが、グループ全体の収益性を高めることが可能になる。売上拡大より、利益の確保を選択したかたちだ。