山田尚子監督、フランスで新作を語る「女性的な作品とは?」

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 2022年6月13日にフランスのアヌシーで始まった国際アニメーション映画祭に、日本からゲストが次々に登壇している。開催3日目には、テレビアニメシリーズ『平家物語』の完成度の高さで注目を浴びたばかりの山田尚子監督が“Working in Progress”と呼ばれるトークセッションに登場し、ファンから喝さいを浴びた。
 「Working in Progress」は、現在、制作中の作品を監督が自から紹介しつつ語るものだ。今回は開催前には『Garden of Remembrance』とのタイトルのみが明らかにされていた短編アニメーションが取り上げられた。今回この場で作品とコラボレーションするアーティストのラブリーサマーちゃんの名前やキャラクター原案の水沢悦子の参加などが次々に発表された。制作中の資料も披露するなど盛りだくさんのトークとなった。

 登壇したのは監督の山田尚子自身、そしてプロデューサーのチェ・ウニョンもオンラインにて参加した。話題は山田がアニメ業界を目指した理由からスタート。幼い頃にみたヤン・シュヴァンクマイエル監督の映画『アリス』の衝撃などを語った。
 サイエンスSARUと山田尚子の出会いは、山田はテレビアニメ『ピンポン』のタイトルを挙げ、そのなかでアニメーターとして活躍していたウニョンの名前を前から意識していたのが最初だ。ウニョンのほうで山田を意識したのは、映画『聲の形』だ。今回のトークの場となったまさにアヌシーで2018年に『夜明け告げるルーの歌』(湯浅政明監督)や『この世界の片隅に』(片渕素直監督)と共に本作がコンペインしていたからだ。

 『Garden of Remembrance』のついてはコンセプトやキャラクターなどが様々なアングルで語られたが、いくつか気になるキーワードが繰り返された。
 まずひとつは「音楽」だ。ウニョンが音楽と結びついたショートアニメーションの企画をまずアイディアとして思いついた。真っ先にイメージしたのが山田尚子監督だった。山田が若い頃にバンドを組んでいたことも知っていたという。それを音楽・映像会社のエイベックスと共に山田に提案したところ、賛同を得た。
 山田は音楽と聞いたときに、すぐにラブリーサマーちゃんを思いついたという。彼女の「私は女の子ですと胸を張って言えるファミニンでパワフルな感じ」を求めたのだという。制作にあたっては音楽が先、映像が先というかたちでなく、思いついたことを話すなかでまず山田がポエムを創作、そこから山田がコンテと映像を、ラブリーサマーちゃんが音楽を作っていった。

 この「女性的」というのがもうひとつの注目ポイントだ。山田は自分自身のこれまでの作品で、しばしば「女性的」という評価をもらうがピンと来ないという。しかし今回はあえてそれに正面から取り組むが、いわゆる「女性的」とは一線を画すことになりそうだ。
 たとえばキャラクター原案の水沢悦子さんの絵については「生活感のある女の子のにおい」があると説明する。それはあまりきれいじゃない生活をしている女の子、それがキュートに昇華しているのだという。キャラクターの「ムチムチ感」について話題が盛り上がり、監督とプロデューサーが考える「ムチムチ」とは何か? といった楽しいトークも繰り広げられた。
 トークの間には、水沢のキャラクター原案やコンセプトアートなど制作中の素材も多く披露された。どこか柔らかい色味の映像だが、テーマがシビアなので逆に色味や背景はキュートにしているだという。
 最後には短い映像も公開され、ファンにはうれしい贅沢な内容となった。さらに山田とウニョンは今後の仕事を問われると、新作長編企画が進行中であることが明かされた。その作品を持って再びアヌシーに来れればと抱負を語った。

『Garden of Remembrance』

『Garden of Remembrance』

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