震災に向きあった川面真也監督、アヌシー映画祭オフィシャルコンペに登壇

川面真也監督

 6月13日から18日までフランスでアヌシー国際アニメーション映画祭開催された。世界最大のアニメーション映画祭として知られているが、この長編部門は長年日本のアニメーション映画が多くノミネートされてきた分野だ。2022年は長編部門オフィシャルコンペに2作品、Contrechamp部門に1作品が選ばれ、上映されている。
 6月17日夜にオフィシャルコンペ部門のひとつ『岬のマヨイガ』がメイン会場ボリューで上映され、アニメーションファンから喝さいを浴びた。また当日は映画祭ならではイベントとして、日本から現地に訪れた川面真也監督が本作についての思いを紹介した。

 日本でもファンイベントに行くと元気がでるという川面監督は、今回もアヌシーの観客から大きな元気をもらったようだ。上映に先立ってロビーで観客の姿を見ていたという監督は、「最高の顔で今日は本当に力をもらっています。素晴らしい場所に呼んでもらって本当にありがとうございます」と力強く挨拶した。
 モデレターを務めたマルセル・ジャン氏に作品制作をした理由を問われると、2つの答えで返した。ひとつは「児童文学というカテゴリーからアニメ化する機会は日本では少なく、そのチャンスを生かしたかったこと」、もうひとつは2011年の東日本大震災である。「大きな災害に対してショック過ぎて逃げていたところがあり、心に残っていた。それに向き合う機会という意味でチャレンジ出来るのでないか」と思ったのだという。

 『岬のマヨイガ』は東日本大震災の大きな被害を受けた狐崎という岩手県の沿岸の町を舞台にする。そこに家出してきた少女のユイと小学生の女の子ひよりが、謎めいた年寄りキワと3人で人里離れた家で暮らすことになる。そこから物語は大地震で封印を解かれた魔物アガメとの闘いになっていく。
 しかし川面監督が「この映画はかなり静かな映画です。同時に大きく感動させたり、泣かせたりするのを避けています。穏やかに女の子たちの日々を描いている。それぞれの抱えているテーマについてフラットに表現している」と語るように、アクションではなく人の心が描かれる。震災で身近な人を失ったものたちの感情などだ。
 今回のアヌシーではピエール・フォルデ監督が村上春樹の短編集『めくらやなぎと眠る女』を原作とした作品でも東日本大震災が取り上げられている。図らずもふたつの作品が異なるかたちで同じ素材を取り上げた。世界のなかで異質とされることもある日本のアニメだが、『岬のマヨイガ』は日本の妖怪などを使いながら、そのテーマにはグローバルな普遍性がある。それが今回、アヌシーで上映作品に選ばれた理由でないだろうか。

川面真也監督

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