2022年6月13日よりフランスでアヌシー国際アニメーション映画祭がスタートした。14日には併設の国際見本市MIFAも始まり、アルプス麓の地方都市アヌシーには世界各国から集まったアニメーション関係者で大きな賑わいを見せている。
映画祭やアニメーション関係者にとっては、コロナ禍で分断された業界のグローバルコミュニケーションの復活として待望のものであろう。2020年に世界各国のアニメーション映画祭、国際見本市はリアル開催中止を余儀なくされた。アヌシーも例外でない。2021年は開催こそ出来たもののオンライン型のハイブリット運営となり、参加者数は大きく減少していた。
2022年はヨーロッパでは新型コロナ対策規制が弱まったこともあり、ほぼ通常モードのイベントとなった。今年は参加登録者数だけで1万2000人以上と2019年とほぼ同じ水準だ。オフィシャルコンペティションをはじめ新作披露や記者会見、ワークショップやセミナーも目白押しである。上映本数はむしろ増加しており、会場の拡大もあちらこちらで目についた。コロナ禍であったにもかかわらず、依然アニメーションが世界的な成長産業であることが窺われた。
それでもコロナ禍に加えて、ウクライナで起きている戦争などの社会状況の変化が映画祭にも影を落としている。会場にはロシアからの参加者はみられず、国際見本市でもロシアは出展していない。
近年、アニメーション業界でも勢いを増していた中国の姿もみられなかった。こちらは新型コロナの影響とみられる。見本市会場のブースだけでなく、さらに参加者もほとんどいないようだ。同じように香港や台湾など、東アジアからの参加は依然慎重姿勢が目立った。韓国からはコンテンツ振興院によるナショナルブースが出展され、行政が力をいれていた。
そのなかで日本の存在は相対的に大きかった。長編・短編・TV部門とコンペティション作品が多く、その関係者はほぼアヌシーに訪れたている。MIFAキャンパスでパトロンという名誉職に任命された湯浅正明監督が就任するなど、日本からの登壇者も多い。
文化庁メディア芸術祭が「Women Creators in Japanese Animation」と題した展示をビジネス見本市で企画して注目されていた。企画に関連したプログラム上映や『魔女見習いをさがして』をテーマに鎌谷悠監督や関弘美プロデューサーらが登壇するセミナーも予定されている。
このほかVIPO(映像産業振興機構)、今年から久々にブースを復活させたJETRO(日本貿易振興機構)などの姿がMIFAの見本市でみられた。一方で毎年、東京のアニメ企業・クリエイターのピッチや作品展示をしてきた東京都の出展は見送られた。東京ピッチは独自のオンライン配信によって実施された。
ビジネス面でのアニメーション業界のトレンドが現れるMIFAの見本市会場だが、非常に盛況であった。現在のアニメーション産業の勢いを感じさせた。
旧市街から20分程度離れたホテルと特設テントが会場になるが、2層の大きな建物の湖に張り出したエリアから構成される特設テントは2019年に比べても一段と拡大している。
2階は誰でも入れるフリーエリアで、各国教育機関やスタジオのリクルート、企業プロモーションなどが中心だ。Netflixオリジナル作品『アーケイン』で名をあげたライアットゲームズの大きな人だかりが印象的であった。またTVPaintやUnity、ワコムなどツールやデバイス系の出展も目立った。
ここ以外はMIFAのビジネス関係者のエリアとなる。初日の朝には、各国機関・企業の設けたブースで活発な商談をする様子がみられた。ヨーロッパ各国からはナショナルブースのほか企業・地方行政など様々なブースが並ぶ。それ以外の地域はナショナルブースが中心となるが、ラテンアメリカやアフリカ、東南アジア、中東・中央アジアなどが積極的に参加する。そこに並べられた作品数の多さに圧倒される。
今やアニメーションは世界中で、とてつもない量が作られている。それはアニメーションが華やかな文化であると同時にビジネスとして厳しい競争も繰り広げているという現実にも気づかされる。