いしづかあつこ監督「小さなデスクのうえから世界に」アヌシー映画祭に登壇

アヌシーいしづか監督

 2022年6月13日、世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭がスタートした。フランス東部スイスの国境にほど近いアヌシーの小さな町に世界中から、アニメーション関係者が集まっている。
 22年も日本から多くのアニメの上映があるが、開幕すぐの初日、映画祭のメイン会場ボリューに日本の監督・いしづか あつこが登壇した。映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』の上映に合わせて、満員の会場の観客に向けて挨拶をした。

 『グッバイ、ドン・グリーズ!』は日本では2022年2月に公開された青春映画である。15歳の少年ロウマとトト、ドロップの3人のひと夏の冒険が舞台。自分たちが追うべき本当の宝物は何なのか探すことが軸となった物語だ。アヌシーでは映画祭のなかでも注目の高い長編部門のオフィシャルコンペティションの公式作品に選ばれている。
 上映に先立つ恒例の舞台挨拶でアートディレクターのマルセル・ジャン氏の紹介により、いしづか あつこ監督が黒いドレス姿で登場。まずは「日本のスタジオの自分の小さなデスクのうえで作っていた作品がこうして海を越えてアヌシーの町でたくさんの人の目に触れるというのがとても幸せです」と本作が映画祭で上映される想いを語った。

アヌシーいしづか監督

 本作は日本の田舎町を舞台にする一方で、その小さな場所から世界がつながっていることが大きなテーマとなっている。日本以外が描かれているシーンも多い。
 それについて監督は「日本人の私たちが見たときの世界はすごい広いんだということを描こうとしたのですが、国境を超えるロケーションハンティングが出来なかったので、すべて想像しながら自分の机の上でやっていたのが大変でした」と苦労を語った。
 さらに「日本のアニメーションでは青春を描くことが多いと思っています。そのなかでこの作品では自分たちの心の中をすごく掘り下げるだけでなく、外にも目を向けてみようと挑戦しました」と説明する。「作品のなかで世界地図がよく出てくるのですが、この地図が日本人の私たちから見た地図であることがこの映画の特徴だと思っています。そこに注目してみていただければと思います」と、日本以外の場で作品が見られることを意識した挨拶となった。

 実際に約1000名収容の会場を埋め尽くした会場の観客は、若い世代中心。上映中はコミカルなシーンで笑い声も、ロウマとトト、ドロップたちの行動は大きな共感を呼んだのでないだろうか。
 今回アヌシーの長編部門の公式作品は全10本、日本からの上映は『グッバイ、ドン・グリーズ!』と『岬のマヨイガ』が選ばれている。この後『岬のマヨイガ』でも監督の川面真也の登壇が予定されている。映画祭最終日の18日には、上映作品の中からグランプリにあたるクリスタル賞など各賞が決定、発表される。

アヌシーいしづか監督

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