東映アニメーションがアニメーター養成プログラム設立、新卒採用から研修システムに移行

東映アニメーション作画アカデミー

 アニメーション制作で国内最大手の製作会社東映アニメーションが、2023年4月期よりアニメーターの新規採用に新たなシステムを導入する。若手のアニメーター志望者を対象とした「東映アニメーション作画アカデミー」を設立し、一年間の集中研修を経て、終了後の成果により採用を決定する。
 「東映アニメーション作画アカデミー」の参加者は、応募者の中から選考により10人程度を決定する。プログラムの受講料は全額を東映アニメーションが負担する。また受講者には奨励金として月額15万円が支給される。東映アニメーションは、1年間を作画技術の勉強に集中する環境を提供するとしている。

 受講者は実習期間終了後に実施される試験に合格すると、東映アニメーションのアニメーターの有期契約社員として雇用される。一方でこれまで実施してきた、アニメーターの定期新卒社員の募集は行われない。
 これまで社員採用後に実施してきた社内研修を「東映アニメーション作画アカデミー」として独立させ、期間中は技術取得に集中させる狙いがあるとみられる。また一年間の期間を設けることで、アニメーターとしての適性を見極める狙いもありそうだ。

 国内で深刻化するアニメーター不足の対策として、大手や有力アニメスタジオは、入社前に技術取得する社内研修システムを導入する例がいま増えている。いずれも受講を無料とするだけでなく、期間中の生活費に相当する資金を提供する。研修後に優秀な人材が入社することを期待するものだ。
 サンライズの「作画塾」やWITスタジオの「WITアニメーター塾」、スタジオポノックの「アニメーター育成プログラム(P.P.A.P.)」、ボンズ作画部部員募集などがあたる。いずれも現場で活躍するアニメーターが指導することが売りになっている。一方で同様のプログラムが増えることで、優秀な新人を獲得する競争は激化しそうだ。

 「東映アニメーション作画アカデミー」では、まず3ヶ月の動画研修を設ける。その後は受講者の志望・適性に合わせて、原画コースと動画コースに分かれる。
 指導者は現役トップアニメーターである。講師陣には東映アニメーションの社内アニメーターの井手武生氏、スタジオ・ライブの神志那弘志氏、板岡錦氏、石井舞氏、中野繭子氏らが参加する。井手氏は東映動画時代の第1期研修生、板岡氏と石井氏は1995年から2011年まであった人材養成機関「東映アニメーション研究所」出身と、自身がこうしたプログラムを経験したことのある。所長は梅澤淳稔氏(執行役員 製作本部 製作部スーパーバイザー 兼IP・人材開発室長)が務める。

 2023年度の募集は2022年7月29日(金)応募締切り。履歴書とポートフォリオ、さらに指定課題「いろいろな遊具がある児童公園内で、小学4年生の男児3人、女児2人の5人の児童が楽しそうに何やら作戦会議をしている様子を描いてください。」を提出する必要がある。書類選考後に2022年8月中旬 実技試験と適性検査、9月中旬の面接の後に合格発表となる。
 近年急激に変化しているアニメ業界で、アニメーター育成のありかたも急激に変りつつある。東映アニメーションを始めとする各社の挑戦が注目される。

東映アニメーション https://www.toei-anim.co.jp/

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