2016年11月3日から6日まで、北海道札幌市で新千歳空港国際アニメーション映画祭2016が開催された。誕生からまだ3回目と歴史は浅いが、日本ならではの多様なジャンルの作品が上映されることで大きな賑わいを見せた。国内外の最新劇場映画や戦前の日本作品、地域の作品などだ。シンポジウムやトークも、アーティスト自身が登壇するなどボリュームたっぷりである。
そのなかでもやはり目玉になったのが、コンペティションである。開催にあたっては世界66ヵ国・地域から1232作品も応募があった。最終日には、この中から各賞が発表された。
グランプリに輝いたのは、ロシアの若手作家Anna Budanovaの『アマング・ザ・ブラック・ウェーブス』。死んだ人間の魂が海の動物に変わるという北欧の伝説に基づいたもので、モノトーンで描かれた人の動きが観る人の心を捉える傑作だ。本作はBudanova が2015年に、ジャパン・イメージ・カウンシルの招聘で東京に滞在中に完成させた。日本ゆかりの作品だけに、作家にとってもうれしいだろう。
日本の作品を対象にした日本グランプリには、228本の中から榊原澄人の『SOLITARIUM』が決定した。英国のロイヤルカレッジ・オブ・アート出身で国内外で多くの賞を重ねるが、今回は新作でアワードを獲得した。新人賞は韓国のKo Seung-ahの『わたしのシカな友達』が受賞した。
応募数も多いが、コンペテイィションに設けられたアワードの数の多さも新千歳空港の特徴となっている。4人の審査員による特別賞、自治体や地元企業による賞、さらにベストミュージックアニメーション、観客賞、キッズ賞と盛りだくさんだ。
しかし、日本作品だけを対象にした日本グランプリを含めても、日本作品の受賞は4つにとどまった。逆に受賞作は、アジア、ヨーロッパ、米国と幅広い国に及んでいる。映画祭の国際性の豊かさとレベルの高さが表れている。
[新千歳空港国際アニメーション映画祭2016 受賞作品]
■ グランプリ
『アマング・ザ・ブラック・ウェーブス』 Anna Budanova (ロシア)
■ 日本グランプリ
『SOLITARIUM』 榊原澄人
■ 新人賞
『わたしのシカな友達』 Ko Seung-ah (韓国)
■ 審査員特別賞
[ジェイン・ピリング]
『MONKEY』 Shen Jie (中国)
[クリス・サリバン]
『ソア・アイズ・フォー・インフィニティ』 Elli Vuorinen (フィンランド)
[チェン・シー]
『エンプティ』 Dahee Jeong (韓国、フランス)
[水尻自子]
『ビフォア・ラブ』 Igor Kovalyov
■ ベストミュージックアニメーション
『Olga Bell “ATA”』 橋本麦 (日本)
■ 観客賞
『ボールド・フューチャー』 Paul Cabon (フランス)
■ キッズ賞
『森のガードマン』 Māris Brinkmanis (ラトビア)
■ 新千歳空港賞
『水準原点』 折笠良 (日本)
■ 外務大臣賞
『プラネモ』 Veljko Popovic (クロアチア)
■ 観光庁長官賞
『レッドエンド・アンド・ファクトリー・プラント』
Robin Noorda, Bethany de Forest (ベルギー、オランダ)
■ 北海道知事賞
『LOVE』 Réka Bucsi (ハンガリー、フランス)
■ ISHIYA賞
『こにぎりくん』 宮澤真理 (日本)
■ サッポロビール賞
『ゴッサマー』 Natalia Chernysheva (ロシア)
■ 北洋銀行賞
『さよならバルタザール』 Rafael Sommerhalder (スイス)
■ 北海道銀行賞
『スリー・ダンサーズ』 Harry Rubin-Falcone (米国)
■ 北海道コカ・コーラ賞
『(オットー)』 Job, Joris & Marieke (オランダ)
■ よつ葉乳業賞
『ダニーボーイ』 Simon Lynen (ベルギー)
■ ロイズ賞
『やけどとほし』 三上あいこ (日本)