エンタメ大手のカドカワが、好調な上半期決算を迎えた。2017年3月期第2半期の連結売上高は、997億9500万円と6.2%増加し、営業利益が44億1900万円(26.1%増)、経常利益が40億1100万円(4.6%減)、四半期純利益が30億2000万円(57.8%増)である。利益面で特に好調だった。
これを受けて、早くも通期業績予想も上方修正した。売上高2020億円、営業利益60億円、経常利益58億円、当期純利益40億円を見込む。
全体を牽引した出版事業は増収増益で、売上高が537億4400万円と10%増だったのに加えて、営業利益は38億8400万円と前年同期の3倍にもなった。
低調だったライトノベルが、アニメ化作品を中心に好調だったほか、コミックスも伸びた。ラノベでは『Re:ゼロから始める異世界生活』、『文豪ストレイドッグス』、『この素晴らしい世界に祝福を』がヒット作だ。また記録的な大ヒットになっている『君の名は。』の関連書籍も貢献した。
業績好調はヒット作だけでなく、ビジネス構造の変化もある。ひとつは電子書籍である。売上、利益とも、引き続き高い伸びを維持し、出版部門を牽引している。また、製造や物流の効率化による返品率の低下、不採算事業からの撤退など組織再編も収益化で効果を発揮する。
一方でポータルサイト事業を中心としたウェブサービスは厳しかった。イベント事業で「超会議2016」のコストが嵩んだことに加え、投資負担が大きく、減収減益だった。売上高は160億8800万円(5.1%減)、営業利益は17億4400万円(39.0%減)である。
コンテンツ配信ビジネスの競争が激化していることもあり、こうしたなかでも積極的な投資が続いている。期中はniconicoをリニューアルし高画質化したほか、生放送配信アプリ、チャンネルアプリを導入する。
映像・ゲームは事業内での好調不調が分かれた。売上高は215億5500万円(12.6%増)、営業利益は13億1100万円(9.6%減)だが、映像パッケージはヒットタイトルが少なかったが、海外向けのライセンス販売と配信向けの収入が好調だった。またゲームは『DARK SOULS Ⅲ』が好調だった。
海外事業は、カドカワがとりわけ拡大を狙う事業となっている。2016年3月期に66億円であった海外売上高を5年後の2021年には200億円超を目指す。現在の約3倍、連結売上高のおよそ10%にあたる。野心的な計画であるが、実現に向けた動きはすでに始まっている。米国では現地の日本マンガ・ラノベの翻訳出版Yen Pressをグループ会社化、世界的な出版グループのアシェットと手を組む。さらに中国ではテンセント、タイでアマリン、マレーシアではアーツ・スクウェアと現地のトップ企業と次々に提携を結んでいる。有力企業の流通網を活用することで、自社のトップコンテンツを各国に届ける。人気の拡大と、販売の増加を狙うというわけだ。