パリ・ジャパンエキスポ来場者数が初の減少に、転機を迎える拡大戦略


2016年7月7日から10日までの4日間、フランス パリ郊外の国際展示場ノールヴィルパンにて開催された第17回 Japan Expoの来場者数が延べ23万4,852人であったことが明らかになった。これは2015年の24万7,473人に比べて5.1%の減少となる。Japan Expoは2000年にフランスの日本ポップカルチャーのイベントとしてスタート、当初はアニメやマンガが中心であったが、音楽、ファッション、伝統文化などを取り入れることで急成長、ヨーロッパを代表する日本のカルチャーイベントとなった。
2016年もアニメ関係ではアニメ監督・演出の前田真宏氏、音楽の鷺巣詩郎氏、マンガ家では真島ヒロ氏、平野耕太氏らがゲストとして姿をみせた。さらにアーティストやアイドル、ゲーム、ファッションの分野から多彩なゲストを招き、巨大イベトを盛り上げた。

しかし、18年に及ぶJapan Expoの歴史のなかで来場者の減少は初となる。これまで大盛況が伝えられてきたJapan Expoの来場者減は、日本の関係者に驚きを与えそうだ。しかし、実際には伸び悩みの兆しは2014年に見られていた。この年、イベントを主催するSEFA EVENTは、開催期間を従来の4日間から5日間に延長している。しかし、来場者数は前年の23万2876人から約24万人と控めな伸びにとどまっていた。2015年は4日間に戻し、24万7473人と記録を更新したものの、25万人の目標を掲げた2016年は、2013年の水準に戻った。
日本カルチャーの海外イベントでは、米国カリフォルニア州のアニメイベントAnimeExpoが2015年に来場数を大幅に伸ばし26万人700人とパリ・Japan Expoを超えた。2016年はさらにこの数字を伸ばし30万人を超え、一挙にJapan Expoを突き放している。

Japan Expoの伸び悩みには、開催時期やパリ市内の他の大型イベントとの時期の重なり、さらにはヨーロッパで続発する無差別テロなど様々な要因が重なっているとみられる。しかし、破竹の勢いで拡大してきたイベントも、そろそろ上限に達してきたとの見方もあるだろう。
一方で、Japan Expoでは、もうひとつ気になる動きがある。2010年代に入り積極的に進めてきたイベントの拡大戦略がうまくいっていないことだ。Japan Expoの成功モデルを海外に広めると、2011年にスタートしたJapan Expoベルギーは13年まで3回開催された後、2014年以来休止している。2013年にフランスの日本カルチャーイベントの米国進出として話題を呼んだJapan Expo USAは、13年にカリフォルニア州サンタクララ、14年に同サンノゼと2回開催のみで、15年、16年は休止しており再開の動きがない。
フランス国内でも日本カルチャー全般に広がったJapan Expoに対して、アニメやマンガによりフォーカスするとして2007年にスタートしたChibi Japan Expoは2007年から2010年までの開催、それに代わってオルレアンで2011年に始まったJapan Expo Centreは2013年で終了した。現在、SEFA EVENTが関わるJapan Expoは、日本人にもお馴染みのパリ、そしてマルセイユで開催されるJapan Expo Sudのふたつにとどまっている。

JapanExpoに代表される世界各国の日本アニメ、マンガ、音楽を中心とするイベントは、日本のカルチャー発信に大きな役割を果たしてきた。そして、その規模の大きさと成長性の高さが注目されてきた。
しかし、伸びるイベントや記録更新は話題になりやすいが、終わってしまったイベントや来場者の減少は話題になりにくい。海外の日本カルチャーイベントのマーケット規模が実際にどの程度あるのか、JapanExpoの例は、あらためて考える機会になりそうだ。

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