世界各国で制作された映画が、国境を超えて観られることがますます増えている。アジアのなかでこの潮流を体現する二人の映画監督が10月30日から11月8日まで開催された第34回東京国際映画祭に登場し、作品や映画制作について意見を交わした。
ひとりは数々のアニメーション映画が大ヒット、『未来のミライ』では米国アカデミー賞にもノミネートされた日本の細田守監督だ。そしてもうひとりは韓国のポン・ジュノ監督。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』は日本でも大ヒットし、記憶に残っている人も多いに違いない。
対談の場となったのは映画祭と国際交流基金アジアセンターが協力して実施した「アジア交流ラウンジ」である。世界の映画人が「越境」をテーマに話し合うプログラムを組み、その中のひとつとの位置づけだ。
そうした企画にぴったりの二人であったが、2020年初頭からの新型コロナ禍で、リアルでのトークとはならなかった。次回作の準備もあるポン・ジュノ監督は米国ロサンゼルスから、10月中はヨーロッパ・米国にいたという細田監督は国内からオンラインのトークとなった。モデレーターとなった荒木啓子さんが映画祭の会場からふたりをつなぐかたちだ。
トークではジャンルを超えて、お互いに作品をよく見合っていることが感じられた。それぞれの作品の細かい部分まで尋ねていたのが印象的だった。
例えばポン・ジュノ監督が「『竜とそばかすの姫』では、日本以外に住むキャラクターたちが海外のアートワークぽい」と指摘。それを受けて細田監督は実はキャラクターデザインのジン・キムさん、Uをデザインした 氏以外でも、海外からデザインに参加してもらっていることを明かした。さらにインターネットで出会う物語なのだからと、インターネットでデザインする人を探したのだという。
またポン・ジュノ監督が『竜とそばかすの姫』では手描きの絵とデジタルの絵が見事に融合していると話すと、「CGは素晴らしいがアニメーターの引く一本一本の線も素晴らしく、アニメーション制作はこれを手放すべきでない」と細田監督。「CGと手描きは二元論ではなく、手法の違いですかない」、「実写とアニメーションのどちらがいいなんて誰も言わない」と説明する。
一方のポン・ジュノ監督は、次回作について話題が及んだ。現在2つの作品を準備中で、1本はアメリカで撮影する映画で来年の撮影開始が目標だ。
そしてもう一本はCGアニメーションになる。もともと学生時代の最初の短編はストップモーション・アニメーションだったが、あまりの大変さに実写に移ったと告白。しかし『グエムル 漢江の怪物』『オクジャ okja』の経験が今回のCGアニメーションの選択につながったようだ。題材は深海の生物、監督の奥さんがパリで見つけてくれた本に掲載されていた深海生物にインスパイアされたものだ。
オンラインではあったが、ふたりの和気藹々とした雰囲気がたっぷり伝わってきた。二人はリアルでの再会を誓いつつトークの幕を閉じた。
第34回東京国際映画祭
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