文化庁は2021年3月3日に、令和2年度の芸術選奨「文部科学大臣賞」と「新人賞」の各分野の受賞者を発表した。このうちメディア芸術分野には、アニメーション監督の湯浅政明氏が大臣賞に、新人賞にはマンガ家の吾峠呼世晴氏を選出した。
芸術選奨は優れた業績を挙げた人物を各芸術分野から選出して顕彰する。演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11分野から構成されている。
湯浅政明氏は『マインド・ゲーム』、『夜は短し歩けよ乙女』、『夜明け告げるルーのうた』など数々の傑作アニメの監督を務めてきた。これまでに文化庁メディア芸術祭大賞3回、アヌシー国際アニメーション映画祭やオタワ国際アニメーション映画祭のグランプリなど、国内外で多数の賞に輝いてきた。ここにまたひとつ大きな賞が加わる。
受賞理由では「アニメーションの表現に革新的変化をもたらしてきた」と言及されたほか、2020年にテレビ放送された『映像研には手を出すな!』の成果が挙げられた。「連続ドラマの面白さをアニメーション技法の技術的な絵解きを通して示した」、「笑いの中にアニメーションらしい動きの面白さを展開させ新鮮である」などとしている。
吾峠呼世晴氏は、2019年より爆発的なムーブメントを起こすマンガ『鬼滅の刃』の作者だ。その存在感の大きさに受賞は誰もが納得するに違いない。「メディア芸術分野の歴史にふさわしい厚みと現在性を兼ね備えている」とする。
芸術選奨のメディア芸術部門は2008年に設けられた比較的新しい分野になる。90年代後半から徐々に進んだポップカルチャー分野への領域拡大の動きのひとつである。
それでも部門全体で「メディアアート」、「アニメーション」、「マンガ」、「ゲーム」と幅広い分野をカバーする。それだけに各分野からの受賞者は必ずしも多くない。これまで大臣賞を受賞したアニメーション監督は山村浩二氏のみ。湯浅氏は2人目になる。新人賞を含めてもアニメーション関係者は細田守氏、長井龍雪氏、沖浦啓之氏の3人のみだ。
またマンガ家の新人賞の受賞者は、井上雄彦氏、岸本斉史氏、ヤマザキマリ氏、東村アキコ氏ら、むしろベテラン勢が占める。吾峠氏の受賞は異例と言っていいだろう。
今年のメディア芸術部門は文部科学大臣賞には12名の候補者と新人賞候には13名の候補者が挙がっていた。ここからそれぞれ5名に絞り込み、そこから1名ずつが選ばれた。
審員員は佐藤雅彦氏、しりあがり寿氏、原久子氏、山村浩二氏、横田正夫氏、吉村和真氏、米光一成氏と、各分野の専門家が務めた。さらに宇川直宏氏、内田まほろ氏、遠藤諭氏、門倉紫麻氏、木船園子氏、工藤健志氏、城一裕氏、中川大地氏、藤津亮太氏、藤島秀憲氏が推薦委員を務めた。
【令和2年度(第71回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の決定について】
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/92861001.html