文化庁がアニメーター人材育成で新プロジェクト、技術の継承・向上を目指す

アニメーター

 文化庁が、国内のアニメーション制作現場の技能向上を目的としたプロジェクトに新たに乗り出す。2020年7月15日に一般社団法人 日本動画協会が事業運営団体として公募採択されたことを明らかにした「令和2年度 アニメーション人材育成調査研究事業」である。
 事業は①「作品制作を通じた技術継承プログラム」、②「就業者を対象とした技術向上教育プログラム」、③「アニメーション業界志願者を対象とした基礎教育プログラム」から構成されている。
7月15日からは、このうち①にあたる7分から10分のショート作品制作をしながらの技術継承を目指す受託団体と育成対象となるアニメーターの募集も開始した。応募締め切りは8月11日必着だ。②、③の公募などの詳細は、今後順次発表する予定だ。

 文化庁はかねてより、アニメーション制作者の育成と技術継承、その環境づくりを重視してきた。2010年から2019年までは「若手アニメーター育成プロジェクト」を実施、20分あまりの作品を実際に制作するなかで、若手アニメーターの技能向上に取り組んできた。
 「若手アニメーター育成プロジェクト」には、過去10年間で延べ40以上の企業・団体、数百名の若手アニメーターが参加した。人材育成に加えて、アニメスタジオの育成プログラム確立にも成果をだしている。
 2020年度は、この「若手アニメーター育成プロジェクト」は実施されていない。10年間の運営のなかでひとつの目的を達したとの判断から終了したと思われる。一方「アニメーション人材育成調査研究事業」は、この成果をもとに次の展開を目指すものとなる。

 「若手アニメーター育成プロジェクト」を引き継ぐだけでなく、新たに加わる部分も多い。引き継がれるのは、①の映像制作をしながらアニメーターの技術向上を目指す点である。ただし作品はショートアニメとなり、作品の完成よりも技術を得る過程がより重視されるかたちだ。また対象となるアニメーターに年齢制限は設けず、広い年代から公募する。
 ②の「就業者を対象とした技術向上教育プログラム」も、幅広いスタッフが対象になる。さらに③の「アニメーション業界志願者を対象とした基礎教育プログラム」では、アニメ業界を目指す若者とより若い世代に年齢を広げる。学生からベテランまで、それぞれの世代に教育プログラムを用意する。

 現在のアニメ業界はコロナ禍のなかで混乱もあるが、依然アニメ作品のニーズは多い。制作現場では十分な技術が身につかないまま仕事をこなすことも少なくないとされている。
 また効率化や特定地域に制作場所が制約されないデジタル化の推進の必要も言われている。新型コロナウィルス感染症拡大防止のなかで、デジタル化への関心が高まっている。しかし制作現場では十分な時間とノウハウがなく、新しい取り組みが遅れている。今回の文化庁のプログラムは、そうした新しい環境のなかでの技術継承の仕組みづくりも目指していそうだ。

「令和2年度 アニメーション人材育成調査研究事業」
https://aja.gr.jp/info/1541

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