北米コミックス市場が過去最高の12億ドル超え、一般書店販売が専門店を逆転

北米のコミックス市場

 2019年の北米コミックス市場が拡大を続け、12億ドルの大台を初めて超えたことが判った。米国のポップカルチャービジネス情報ICv2とコミックス出版マーケット情報Comichronが、2020年7月10日に明らかにした。
 両社は毎年共同で、北米のコミックス市場調査をしている。2019年は「floppies」と呼ばれる雑誌形式のコミックスと単行本形式のグラフィックノベルの売上げ合算が12億1100万ドル(約1300億円)に達したと発表した。前年の10億9500万ドル比で11%増、過去最高水準を更新した。10年前、2010年と較べてほぼ倍になる。

 成長を牽引したのはグラフィックノベルで、売上げ7億5600万ドルは前年比で19%増にもなる。2018年に続き二桁成長になる。具体的な売上げは今回は示されてないが、2019年は日本マンガの売上げも伸長した可能性がある。北米における日本マンガはほぼグラフィックノベルのかたちで刊行されており、グラフィックノベルの2割程度を占めている。
 一方でコミックスは1.4%減少の3億5500万ドルで伸び悩んだ。電子書籍も9000万ドルで前年の1億ドルから10%減少だ。音楽や映像では普及が急速に進む配信だが、コミックス分野では2010年代に成長がみられない。ただしICv2とComichronの調査には、アマゾンの月額サービス「Kindle Unlimited」や少年ジャンプ作品が定額課金で楽しめる「The Shonen Jump app」やサブスクリプション型のサービスを含んでいない。今後はこうした現在は見え難い市場をどう数字として統計に取り込んでいくかが課題になりそうだ。

 グラフィックノベルの好調とコミックスの伸び悩みは、流通チャネルの変化にも表れている。2019年は一般書店での販売が、ファン向けのコミックス専門店の売上高を初めて上回った。コミックス専門店はコミックスを主体とし、一般書店はグラフィックスノベルを得意としていることが影響している。一般書店は好調を維持している児童向けや日本マンガの取り扱いも多い。
 一般書店の売上高は5億7000万ドルで27%増、コミックス専門店は5億2500万ドルで3%増である。デシタル配信は9000万ドル、また売店での販売やクラウドファンディングなどのその他が2500万ドルだった。

 好調であった2019年であるが、2020年はこうした好調を維持するのは難しそうだ。新型コロナウィルス感染症の広がりで発売延期が相次いだほか、外出自粛はリアル販売が中心の北米市場に打撃を与えているとみられる。
 またコミックス流通の大手ダイヤモンドが一時期出荷を停止した影響も見逃せない。出版大手のDCコミックがダイヤモンドの流通を中止するなど流通の混乱がこれに拍車をかけそうだ。
 
Comichron https://www.comichron.com/
ICv2 https://icv2.com/

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