新型コロナ感染症拡大防止のため、映画や演劇の配給・興行が十分に稼働出来ない状態が続いている。そうしたなかで大手映画会社の東宝が2021年2月期第1四半期(20年3月~5月)の決算を発表した。
当該期間は映画館・舞台運営の休止・縮小や公開延期が特に集中したこともあり、連結売上高は前年同期比51.3%減の330億1200万円とほぼ半分となった。利益面の落ち込みも厳しく、営業利益は28億300万円(82.5%減)、経常利益は28億9100万円(82.1%減)、当期純利益は2億1800万円(98.0%減)となった。劇場や商業施設での臨時休業期間中の人件費・借家料・減価償却費、休業した演劇公演の製作費用を特別損失に計上したことで純利益が圧縮されている。
多くの事業が滞るなかで、利益を支えたのは不動産事業である。第1四半期の売上高は3.8%減の170億7600万円となったが、営業利益は50億4600万円(8.0%減)を確保した。
一方で、映画事業と演劇事業は大幅減収と赤字転落となった。最も厳しかったのは演劇事業で売上が84.6%減の6億7400万円、営業損失は7億1000万円。劇場興行の中止・延期が直撃した。帝国劇場で『Endless SHOCK』『エリザベート』『ミス・サイゴン』が中止、シアタークリエ、日生劇場でも中止が相次いだ。
映画事業は、映画営業(製作・配給・販売)と映画興行、映像事業(映像ソフト・ODS・出版ライセンス)の3部門で構成される。売上高は148億300万円(66.7%減)、営業損失が5億4400万円と赤字転落した。
なかでも映画興行が厳しいのは、演劇事業と同様である。映画興行の売上は前年比84.3%減で35億2500万円。第1四半期だけで17億2200万円の赤字となった。
映画営業では期間中予定していた東宝7作品『映画ドラえもん のび太の新恐竜』『名探偵コナン 緋色の弾丸』など、東宝東和の6作品の公開を延期した。主要作品で公開したのは『貴族降臨 PRINCE OF LEGEND』 『弥生、三月君を愛した30年』の2作品のみであった。映画営業の売上は35億7700万円(75.7%減)、営業利益は8600万円(98.0%減)だった。
映像事業は堅調だった。売上高は77億円(7.8%増)、営業利益は10億9200万円(24.4%減)。『映像研には手を出すな!』などのODS公開の延期があったが、DVDやBlu-rayの映像ソフトが好調で業績を下支えした。『天気の子』、『劇場版おっさんずラブ』のヒットが大きかった。パッケージ事業売上は32億8600万円(186.5%増)と約3倍だった。
アニメ製作事業も好調で、売上高は99.4%増の31億2100万円。期間中は製作出資した『BNA ビー・エヌ・エー』の放送があり、『僕のヒーローアカデミア』や『東宝怪獣キャラクター』などの商品化権収入、製作出資作品の配分金収入もあった。
出版・商品事業は10億400万円(93.2%減)、実写製作事業が2億6200万円(64.3%減)、ODS事業が5200万円(88.7%)だった。
東宝は前期末には、見通しが困難として業績予想を開示していなかった。しかし今回は、2021年2月期連結業績予想を公表している。
通期連結売上高は1620億円(38.3%減)、営業利益100億円(81.1%減)、経常利益110億円(80.0%減)、当期銃利益50億円(86.3%減)である。引き続き厳しい数字だが、下期以降の立ち直りを見通し、通期でも黒字を確保する。