2019年11月18日、国内大手出版社の講談社は、海賊版リーチサイト「はるか夢の址」に関する損害賠償請求訴訟において勝訴したと発表した。当該裁判は今年7月9日、講談社が大阪地方裁判所においてサイト運営者3名に対して行ったものである。
講談社によれば判決は同社の主張を全面的に認めるもので、3名に対して総額約1億6000万円の支払を命じた。すでに3名は今年1月に、刑事事件としても大阪地方裁判所から実刑判決を受けている。11月1日には3名が行っていた控訴が棄却され判決が確定している。今回はこれに加えて著作権侵害行為による損害でも責任を問った。
「はるか夢の址」は書籍・マンガの海賊版コンテンツへの誘導を目的としたリンクを集積したサイトで、インターネット上で広く知られていた。2017年7月の関係者逮捕でサイトは閉鎖されたが、一般社団法人コンピューターソフトウェア著作権協会は2016年7月から17年6月までの1年間に、マンガだけでも約731億円の被害をあったと算出している。
講談社は刊行する8つの雑誌の編集著作権を侵害されたとして、約1億6000万円の損害賠償を請求していた。これが全額認められた。
「はるか夢の址」の違法コンテンツへ誘導するリンクを張る行為自体の違法性は現在見解が分かれるところだ。しかし3名はマンガを中心に多数の作品を無許諾でインターネット上にダウンロードし、それを「はるか夢の址」をプラットフォームとすることでユーザーを誘導していた。今回は違法アップロードと、それに対する誘導を併せることで有罪としている。
出版業界は長年、インターネット上の海賊行為によって、大きな被害を受けてきた。一方で煩雑な手続きが多いことから、法的な手段に訴えることは必ずしも多くなかった。しかし、デジタルマンガの市場規模が紙出版を超えるなどビジネスがデジタルに移る中で、現在は海賊行為により厳しく対応するようになっている。
今年9月には違法にコピーしたマンガを公開する「漫画村」の運営首謀者が逮捕されている。さらに閉鎖された「漫画村」のスキームを模倣した新たなサイトに対しても大手出版社が米国で裁判を起こしている。
とりわけ「漫画村」の閉鎖後、国内各社のデジタルマンガの売上が大きく伸びたことから、今後も違法行為には厳しい対応が続きそうだ。実際の被害総額に較べて、1億6000万円は必ずしも多くはない。しかし個人が負う損害賠償金額としては少なくない。こうした損害金額の認定は、海賊行為の抑止力になることも期待される。