三菱UFJが映画投資ファンド設立 講談社、制作会社クレデウスと協力

Japan Creative Works 1号投資事業有限責任組合

■原作・講談社、制作クレデウス、三菱UFJ銀行が約66億円出資

 三菱 UFJ フィナンシャル・グループが、世界レベルのエンタテイメント作品創出を目的にした映画ファンド事業に乗り出した。出版大手の講談社、映画『キングダム』などで知られる制作会社クレデウスと協力し、日本のエンタテインメント分野への投資に特化したファンドを設立する。
 投資ファンドは、クレデウスが講談社のマンガ・小説を原作に制作する実写映画シリーズの製作費を調達する。大作実写映画の資金調達では製作委員会方式が主流の国内で、ファンドを使った大きな取り組みが映画業界にインパクトを与えそうだ。

 今回の取り組みでは、資金調達の受け皿となるファンド「Japan Creative Works 1号投資事業有限責任組合」が、まず設立される。三菱 UFJ 銀行がファンドに約66億円を出資するほか、外部の投資家からも出資を募る。ファンドの運用を三菱UFJ信託銀行が担当する。

■制作側に成功報酬を設定
 
 一方、講談社とクレデウスは、共同で合同会社CK WORKSを設立する。CK WORKSは講談社が出版するマンガや小説を原作にした実写映画シリーズを企画・製作し、Japan Creative Works 1号がCK WORKSの映画製作に資金を拠出する。ファンド期間は約6年10ヶ月を予定、最大4年延長が可能だ。
 CK WORKSは映画制作開始時からまとまった資金を獲得できるため、大規模予算の映画制作が可能になる。また、収益の分配にあたっては投資家へのリターンだけでなく、作り手に成功報酬を設ける。資金調達の実現とクリエイターへの利益還元を目指す。

 現在、日本のエンタイメント分野は、アニメやマンガ、ゲームなどで世界中に多くのファンを持つ。実写映画についても、次に海外進出が狙える分野として注目が増している。成長分野として、国内外の企業、投資ファンド、政府系ファンドが関心を寄せている。
 これまで日本の大作実写映画は、複数の企業が出資金を分担する製作委員会方式で制作されることが多かった。製作委員会は、当たりはずれの大きいエンタテイメント業界において各社がビジネスリスクを小さくしながら利益を回収する方式として成功してきた。しかし、製作委員会に参加する各社が想定する制作予算には上限もあり、海外並みの大型予算の実現が難しかった。予算規模は映像のクオリティにも影響を与えているなか、金融機関やファンドの投資が関わることで予算の大型化が期待できる。

 ファンドのリスク低減は、クレデウスの実績が大きい。クレデウスはこれまでに『キングダム』、『ゴールデンカムイ』、『沈黙の艦隊』、『銀魂』といった、予算をかけた大作シリーズをいくつも手掛けるなどヒット作が多い。これらが投資サイドに一定の安心感を与える。

■予算をかけたリッチな映像で海外展開も期待

 また予算をかけたリッチな映像とすることで、海外販売も強化し、収益拡大を目指す。高品質のクオリティの高い映像が海外販売につながるとの見通しもあるだろう。
 国内では2024年に、国内の著名監督やアニメスタジオと手を組んだK2 Picturesによる100億円規模の映画製作ファンド「K2P Film Fund」も立ち上げられている。こちらも国内外の投資家の出資を期待するものだ。長年、課題となってきた邦画の映画製作予算の調達に、投資ファンドが大きなインパクトをもたらしつつある。

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