KADOKAWA、講談社、集英社、小学館の大手出版4社が、米国のIT企業クラウドフレア(Cloudflare, Inc.)に対する裁判で、2019年6月に和解を成立させていたことが明らかになった。2020年2月20日に出版広報センターを通じてリリースをした。
出版広報センターは出版9団体で構成され、出版界の課題に関する広報活動をしている。
発表によれば4社は2018年8月に弁護士を通じて東京地方裁判所に、クラウドフレアのサーバーから複数の海賊版サイトの送信を差し止めるよう求める仮処分を申立ていた。クラウドフレアが「漫画村」の後継サイトとされた「星のロミ.org」などの日本マンガを違法にアップする海賊版サイトにサービス提供していたことに対応するものである。
東京地裁の提訴を経て、4社は2019 年6月にクラウドフレアと和解を結んだ。この和解では、海賊版サイトでの著作権侵害を4社が指摘し、それを裁判所が認めた場合には、クラウドフレアは自社サーバー内でのキャッシュ(複製)を中止するというものである。
クラウドフレアは“コンテンツ・デリバリー・ネットワークサービス”と呼ばれる事業の大手で、各サイトへのアクセスをスムーズにするシステムを提供している。システムのひとつが、自社サーバー内部に取引先のコンテンツのキャッシュを保存するものであった。
キャッシュをとれなくなると、ユーザーがウェブにアクセスする際にリスポンスが遅くなる。またアクセス過多への対応も悪くなる。
一方でクラウドフレアは、海賊版サイトに対してシステム提供サービス自体は続けることが出来る。それでもキャッシュがなくなることで海賊版サイト利用者の不便性が増す。
もともと今回の提訴は、複数の海賊版サイトを念頭に置いたものだった。しかし和解の段階で当該サイトは閉鎖されていたため、昨年の段階での公表を見合わせていた。
一方で海賊版サイトがクラウドフレアのサービスを利用しようとする動きは現在も続いているという。そこで出版社サイドとクラウドフレアとの間で対応策が構築されていることを告知することが、海賊版サイト運営者に対して警告になると判断した。