エンタテインメント大手のカドカワは、8月10日に2018年3月期第1四半期の決算を発表した。出版事業に牽引され売上高は微増の499億4100万円(1.9%増)だったが、利益は大きく減少した。営業利益は7億9000万円(71.1%減)、経常利益が6億4000万円(68.6%減)、純損失が2300万円となった。
ドワンゴを中心とするWebサービス事業が減収減益だったほか、出版事業、映像・ゲームでも減益となった。動画配信サイトの新バージョンや、製造・物流を一体化した書籍新工場の建設などデジタル時代に対応する投資が先行している。
主力の出版事業は売上高270億1300万円(4.1%増)、営業利益10億9400万円(49.3%減)である。出版事業は、書籍、雑誌、デジタルが前年同期比でいずれも売り上げを伸ばした。ただし在庫の評価減と、ライトノベルとコミックスの勢いがにぶったことから利益面では赤字だった。
分野ごとでは書籍が営業赤字となっているが、これは電子書籍を含めた編集、マーケティングコストの全てが書籍部門の負担となっていることも理由だ。今後は書籍とデジタル書籍でのコスト配分を目指す。
映像・ゲーム事業は、売上高は107億3500万円(4.9%増)、営業利益6億4200万円(38.9%減)。実写映画の低調で映像が利益を減らした一方で、アプリゲームが好調だった。
アニメでは映像パッケージで『幼女戦記』、『この素晴らしい世界に祝福を!2』が、海外ライセンス販売で『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』、『Re:ゼロから始める異世界生活』が貢献した。
ゲームは『DARK SOULSⅢ』、アプリゲーム『戦刻ナイトブラッド』、『天華百剣 -斬-』、『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』が主力タイトルである。
Webサービス事業は減収減益。売上高は76億800万円(3.9%減)、営業損失は7200万円。ポータル事業ではプレミア会員の減少が続いたほか、新サービスに向けた投資が嵩んだ。またニコニコ超会議を中心としたライブ事業は、売上を伸ばし、幅は縮小したものの赤字からは抜け出せなかった。
懸念されるのはプレミア会員が236万人と、2四半期連続で減少していることである。無料会員も含めたniconicoのユーザー数を示すMAU(月間アクティブユーザー)も913万人から894万人と減少している。減少幅は大きくないが、インターネットの普及がほとんど行渡った現状で、単純なユーザー数の増加は限界に達しつつあることが分かる。
第2四半期以降は、17年10月に導入を目指す「niconicoの新バージョン(く)」の成果が鍵を握りそうだ。新バージョンでは、サーバーや遅延の問題をクリアし、画質も向上させる。さらにスマートフォン対応などの新しい機能が付加される。