映像プラットフォームの普及と共に、近年、日本アニメが一段と世界的に広がりつつある。なかでも世界最大規模のストリーミングサービスであるNetflixは、日本アニメの積極的な配信での役割の大きさで注目を浴びている。
そのNetflixがアニメーションの番組配信だけでなく、若手クリエイターの育成支援に乗り出す。世界規模でネットワークを持つ同社らしく、世界の若い才能を国境を越えてつなぐ。そのひとつは日本アニメを通じた研修プログラムになる。
2019年6月12日、Netflixはフランスで開催中の世界最大のアニメーション映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭にて、フランスのアニメーション学校 ゴブラン(GOBELINS)と提携する「Netflix Animation Fellowship」と「Character Animation Scholarship Program」のふたつのプログラムを発表した。
「Netflix Animation Fellowship」は、同校卒業の学生を毎年1名、Netflix東京オフィスのオリジナルアニメ制作チームに参加させる。日本アニメへの理解を通じたスキルアップと、Netflixオリジナルの制作にも貢献する。
「Character Animation Scholarship Program」は、逆にゴブラン側に学生を送りだす。アフリカ在住の学生に奨学金を支給し、ゴブランの大学院プログラムでキャラクター・アニメーションとアニメーション映画制作を学ぶ機会を与える。今後4年間、年間最大10名を予定する。
ゴブランはおよそ50年もの歴史を持つ名門アニメーション学校で、その教育プログラムと卒業生の活躍はフランスだけでなく、世界で知られている。伝統的なアニメーションだけでなく、CGやデジタルといった新分野にもいち早く乗り出すなど積極的だ。アニメーション教育では世界の最高峰のひとつとされ、日本のアニメーション教育機関でもそのプログラムを参考にすることが多い。
一方でゴブランには、日本アニメに関心を持つ学生も多い。これまでも日本のスタジオで活動したアーティストも少なくない。こうしたニーズもプログラムの背景にあるだろう。
今回のプログラムに選ばれると、Netflix東京オフィスで日本のアニメ技術やクリエイターに接しながらNetflixオリジナル作品の制作に携わる。第1回はフランス出身のクレア・マッツさんが選ばれた。子どもの頃から『カウボーイビバップ』や『新世紀エヴァンゲリオン』などに影響を受けたという学生だ。
Netflixにとっては、同社の目指す文化の多様性を促進するものとなる。すでにNetflixオリジナルアニメには、クリエイティブと制作で国境を越えてスタッフが参加する作品が急増している。プログラムは多様性に満ちた企画・制作体制を強化する。同時にNetflixのそうした方向性を世の中に伝える目的もありそうだ。