海外同日配信も吹替え時代、「僕のヒーローアカデミア」英語吹替え版4月からスタート

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 過去5年間で日本アニメの海外同日配信は急激に広がり、その人気の拡大に大きな貢献をしてきた。その同日配信にさらに新たな潮流が加わりそうだ。
 米国の日本アニメビジネスの大手ファニメーション(FUNimation)は、このほど『僕のヒーローアアカデミア』のテレビアニメ第3シーズンのライセンス獲得を発表した。日本でも4月から日本テレビ他で放送が決定している人気作品である。ファニメーションは第1、第2シーズンの北米ライセンスを保有しており、引き続き作品を盛り上げる。

 北米展開の鍵となるのが、いまやファンが日本アニメに触れる最重要メディアとなった配信だ。ファニメーションは第3シーズンスタートにあたり、現地声優のアフレコによる英語吹き替え版を日本と同日に配信することを明らかにした。第1、第2シーズンでも同日配信はしてきたがいずれも字幕版で、吹替え版は2週間後のスタートであった。
 日本での初回放映と同日の4月7日に、第1話を自社配信プラットフォーム「FunimationNow」で配する。配信は米国、カナダの他、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスでも行われる。現時点で第6話までの同日配信が決まっている。

 近年の海外での日本アニメの人気拡大に、海外向けの同日配信が大きな役割を果たしているとの指摘は多い。しかし、同日配信の大半は、日本語の番組に各国語の字幕をつけたものだ。
 吹替えにはコストと時間がかかること、また日本アニメでは放送と同時進行で制作されることの多くスケジュール的に困難というのも理由だ。
 さらに海外のコアな日本アニメファンは、吹替えよりもよりオリジナルに近い字幕版を好むとされることが多い。しかし、近年増えているよりマイルドな日本アニメファン、あるいは日本アニメにこだわることなく作品を楽しむ視聴者には、番組を楽しむのにストレスが少ない吹替え版は親しみやすい。
 日本アニメの配信に力を入れるNetflixは、番組の全話完成納品を前提に、英語を含む世界数か国語の同日配信で人気を集めている。ファニメーションも一部でこれに追随することになる。『僕のヒーローアカデミア』はキッズ層を中心に他作品よりファンのボリュームが大きいことも理由だろう。吹替え版の早期投入で、ファンの拡大も狙える。

 しかし、ファニメーションにとって吹替え版の同日投入は依然ハードルが高い。現時点で第6話までとしているのも、日本の制作スケジュールと、英語でのアフレコのスケジュールの調整が課題になっている可能性が高い。
 一方で『僕のヒーローアカデミア』は、FUNimation以外の有力プラットフォームであるクランチロールやHuluでも同日配信される。こちらはいずれも字幕版で、吹替え版はFUNimationだけだ。人気作品だけに多くのプラットフォームを通してより多くのファンに届けたい、一方で自社プラットフォームでの視聴者の囲い込みをしたい。
 吹替え版独占配信はそうしたビジネスの思惑を両立させるだけに、FUNimationは今後も積極的に進めたいに違いない。字幕版の同日配信が多くの困難を乗り越え普及したように、吹替え版の同日配信も普及するのか?2018年以降の、海外ビジネスの焦点のひとつになりそうだ。 

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