米国の日本アニメ配給会社ファニメーション ユニバーサルとソニー・ピクチャーズが買収に意欲

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 米国の日本アニメ配給の大手として知られてきたファニメーション(Funimation)の経営が大きく変わる可能性が出てきた。米国の経済情報企業ブルンバーグは、2017年5月2日付で、大手映画会社のユニバーサルと、ソニー・ピクチャーズが同社の買収に関心を示していると報じた。
 買収交渉の具体的な内容は明らかにされていないが、ユニバーサルとソニー・ピクチャーズが競り合っているとしている。ファニメーション自身が企業売却に対して意欲的ともとれ、今後の大きな展開の可能性もありそうだ。

 ファニメーションは1994年に現CEOのゲン・フクナガ氏らが起業、2000年代前半までの米国での日本アニメ人気拡大と共に成長した。2000年代半ばの日本アニメの不況時代には、老舗の日本アニメ配給会社が次々に経営破たん、事業撤退をするなかで、巧みな経営手腕と『ドラゴンボールZ』や『鋼の錬金術師』といった人気タイトルに支えられ生き残った。いまでは北米で有数の日本アニメ・映画の配給会社として知られている。
 現在はライセンス事業や映画の劇場配給も行う。4月7日より映画『君の名は。』の北米公開もしており、5月10日の時点で興行収入471万ドルのヒットを実現している。

 一方で、ファニメーションの経営母体は、時代の変化に合わせてたびたび入れ替わっている。2005年には中堅映像・ソフト会社ナバレ(Navarre Corporation)が同社を買収、さらに2011年にはフクナガ氏が投資家と共に会社をMBOした。
 ブルンバーグの報道によれば、ファニメーションは2013年より現在まで毎年売上高が二桁成長、年間売上高は1億ドル(110億円)を超える。これは2010年代に入り、北米における日本アニメのビジネスが再び成長しているとする業界内の見方とも一致する。
 
 現在もフクナガ氏と投資家が会社を保有するが、近年のビジネス環境の大きな変化が、新たな決断をファニメーションに迫っている。ファニメーションは長年、DVDやBlu‐rayのビジネスを得意としてきたが、北米の映像ソフトのマーケットは急激に縮小している。
 ファンの日本アニメの視聴は、映像ソフト購入やテレビ視聴から配信に移っている。ファニメーションも「FunimationNow」の名前で月額定額でアニメ見放題のサービスを提供するが、この分野で先行するクランチロールなどの手強いライバルが存在する。クランチロールは、昨年、チャーニン・グループ、AT&Tといった巨大企業の傘下に入った。また、映像配信大手Amazon プライム ビデオも、今年1月に日本アニメに特化した「Anime Strike」をスタートした。

 ファニメーションは2016年に9月にクランチロールと番組相互供給を目玉とした提携を発表している。提携は買付け競争で高騰した日本アニメのライセンス価格を抑える効果はあるが、両社が同じタイトルで配信サービスを行えば、体力に劣るファニメーションは先細りになりかねない。
 そこでユニバーサル、ソニー・ピクチャーズといったハリウッドメジャーの出資を受けることで、これに対抗するストーリーが浮かび上がる。戦略的な企業売却を視野に入れるわけだ。

 ユニバーサルとソニー・ピクチャーズは、拡大する映像配信ビジネスのキラーコンテンツとして日本アニメに期待していそうだ。かつては『ドラゴンボールZ』やスタジオジブリ作品などの一部を除くとニッチとされる日本アニメだが、近年その人気は広がっている。
 日本アニメ専門のクランチロールは有料会員だけで100万人以上を抱え、NetflixやHuluでも日本アニメの視聴は多いとされている。またロイヤリティーが高い日本アニメのファンは優良ユーザーでもある。
 一方で、両社の日本アニメ戦略には不安も残る。ユニバーサルは日本法人のNBCユニバーサルが日本アニメを得意としている。ソニーも日本アニメの有力企業アニプレックスをグループに持つ。グループ企業との連携を探ることなく、独自に進めるアニメ戦略が、どこまで練られたものなのか気になるところだ。

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