2020年5月19日、ソニーは会社商号のソニーグループの変更やソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化など相次いで大きな発表をした。これに合わせて代表執行役社長兼CEO吉田憲一郎氏は、同日に経営方針説明会でグループの戦略を語った。
吉田社長はグループ全体の経営に加えて主要事業ごとの戦略にも言及したが、このひとつに初めて「アニメ」が含まれた。主要事業は「ゲーム&ネットワークサービス」、「音楽」、「映画」、「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション」、「イメージング&センシングソリューションズ」、「金融」、それに「アニメ」の7分野である。
各分野は決算開示の際の事業セグメントに対応しているが、アニメのみがゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画の複数セグメントにまたがっている。いわば異例の扱いである。
ソニーがグループのなかでアニメを重要事業と位置づけるのは、このセグメントをクロスオーバーするところに理由がありそうだ。吉田社長は、アニメをソニーが掲げる「“One Sony”=部門間の垣根を取り払い、総力戦で商品を開発する体制」を体現するものと捉えている。
今回の戦略発表の表題も、「アニメ~One Sonyを体現するもの」である。このなかでアニメを、ゲーム、音楽、映画にまたがるファンが非常に強いコミュニティを形成するIPジャンルと説明する。さらに過去5年で約1.5倍の伸びた日本アニメの世界市場の成長性、市場の約半分を占める海外売上の重要性に着目する。
グローバルもアニメ事業の重要なポイントである。プレゼンテーションでは、アニメの主要企業として国内ソニーミュージックグループのアニプレックスのほか、米国のソニー・ピクチャーズが運営する日本アニメ会社ファニメーションを取り上げた。
アニプレックスはグループでコンテンツ創出の役割を担っており、ファニメーションは日本アニメを世界のコンシュマーの届ける役割である。さらにこれをゲーム事業が補完する。アニプレックスの代表作に大ヒット中の『鬼滅の刃』が挙げられたが、今後の展開として同作のモバイルゲーム、PS4向けゲームの制作を進める。またアニメとゲームの親和性が強いことから、PlayStation Networkでのファニメーションのプロモーションを今後は強化する。
日米だけでなく、中国における事業も拡大する。「Fate/Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア-」を配信する現地企業ビリビリに約4億ドルを出資、アニメとゲームの協業を目指す。
日本アニメ産業は、かつては中小企業の集まりだった。また大企業が事業とする際も、主要事業でない傍流とみられがちであった。そうしたビジネス規模の小ささが、人気の高さに比べてビジネスが大きくならない理由でもあった。
しかし近年は、大手アニメ企業が成長を続ける一方で、巨大企業がアニメを積極的に取り扱うケースが増えている。そうしたなかでのソニーの動きは、アニメ産業の今後にも影響を与えそうだ。