ソニーグループ 米国アニメ配信クランチロール買収完了 アニメ海外事業強化へ

クランチロール新ロゴ

 ソニーグループによる米国の大手アニメ配信クランチロールの買収が完了した。2021年8月10日(日本時間)、ソニーグループより発表された。買収価額は11億7500万ドル、日本円で約1300億円でクランチロールを運営するイレーションの持株100%を取得した。
 クランチロールは米国の大手通信会社AT&Tの子会社で、日本アニメのグローバル配信で世界最大規模を誇る。登録ユーザーは1億2000万人超、月額課金の有料会員は500万人超である。ソニーグループはクランチロールの獲得で、近年拡大するグローバルのアニメ事業の基盤をさらに強固にする。

 ソニーグループがAT&Tよりクランチロール事業の取得する方針は、2020年12月に発表されている。その後、米国の関係機関の審査を得て、およそ8ヵ月で買収を完了したことになる。
 実際の買収は、ソニーグループ傘下のソニー・ピクチャーズ(SPE)の子会社ファニメーション・グローバルがする。ファニメーション・グローバルには、ソニー・ミュージック(ジャパン)(SPEJ)の子会社のアニメ事業会社アニプレックスも出資し、グローバル事業で連携している。
 またファニメーション・グローバルは、米国ファニメーションのほかオーストラリア・マッドマン、フランス・ワカニム、英国・マンガエンターテイメントなど各国のアニメ事業を統括している。クランチロールもここに加わるが、クランチロール自体がフランスのアニメ・デジタル・ネットワーク、ドイツのアニメ・オン・デマンドなどの各国にグループ会社を持つ。これらによりファニメーションの世界事業は、さらに拡大する。

 クランチロールは2006年にユーザーよる動画投稿ファンサイトとしてスタートした。その後、米国のベンチャーキャピタルや日本企業の出資を受けるなかで日本アニメの正規配信企業へ転身。さらにウェブメディアグループのオッターメディア経て、2018年にタイム・ワーナーと経営統合したAT&Tのグループのワーナー・メディアの事業部門となった。
 しかしAT&Tの企業負債削減方針のなかでクランチロールの売却が浮上し、ソニーグループがこれに乗ったかたちだ。

 ソニーグループにとっては事業強化につながる買収だが、アニメ業界にとっては懸念も浮上する。2010年代半ば頃まで、北米の日本アニメ市場は、ファニメーション、クランチロール、アニプレックス・オブ・アメリカの3社が主要企業であった。
 しかし2017年にソニー・ピクチャーズがファニメーションを買収、アニプレックスの海外事業と統合された。さらにここにクランチロールが加わると、北米市場の寡占が一気に加速する。日本のアニメ企業の海外事業は、北米と中国への番組ライセンス販売が主要な収益になっている。すでに中国は規制強化や配信会社の統廃合で販売価額が下落している。さらに北米市場で番組購入の獲得競争がなくなり、ライセンス販売価格が下がれば影響が大きい。統合による市場の寡占化はフランスやオーストラリアなどでも進むため、ソニー以外の企業は今回の買収を慎重にみることになりそうだ。

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