新型肺炎の感染が世界に広がる中で、アニメ業界に思わぬ影響が出てきた。2020年1月から放送をしているテレビアニメシリーズ『とある科学の超電磁砲T』が、2月21日放送予定の第7話「Auribus oculi fideliores sunt.(見ることは聞くことより信じるに値する)」の放送延期を発表した。
製作委員会である「PROJECT-RAILGUN T」の名前にて、作品の公式サイトで告知した。昨今の「COVID-19」(新型肺炎)の影響により制作上の都合がつかないためと説明している。
放送が予定されていた2月21日には、第6話「開戦」を再放送する。第7話の新しい放送日は未定で、決定次第公式サイトにて発表するとのことだ。
これとは別にやはり1月からスタートしていたテレビシリーズ『A3!』は、2月13日に第4話以降の放送を一旦中止、4月以降に再調整すると発表している。こちらは「工程上起きたスケジュール管理に起因する問題の解消に時間を費やしている」、さらに「海外での新型肺炎に関わる不測の事態が重なった」とする。
『A3!』は新型肺炎が問題化する以前からスケジュールの遅れがでていた。ここに新型肺炎の問題が重なることで、放送の大幅延期を決断したとみられる。
一般には、なぜ新型肺炎が放送延期に結びつくのかやや判りにくいかもしれない。これは長年かかって築きあげられたアニメーション制作の国際分業体制に起因する。
手仕事の多いアニメーション制作は大量の人材を必要とし、1970年代以降、作業の一部を海外に発注してきた。現在はアニメーションの絵を描く動画や原画、背景美術、仕上げといった工程の一部が中国、韓国、ベトナムなどで行われている。その量の多さから、国際分業なしでは日本のアニメーション制作は成り立たないとされている。
そうしたなか今回の新型肺炎の発生で、中国での制作作業の多くがストップした。ストップした作業は日本や韓国、ベトナムでも引き受けきれず、スケジュールの遅れが生じることになる。『とある科学の超電磁砲T』の決定は、こうした状況を反映したとみられる。
問題は中国でアニメーション制作の一部を行っているのは、『とある科学の超電磁砲T』に限らないことだ。国内の大半の作品が同様に体制であるため、今後も同様のケースが出る可能性はありそうだ。