高橋留美子がアイズナー賞”コミックの殿堂“に、「AKIRA」2部門受賞も

Akira 35th Anniversary Box Set

 2018年7月21日、米国カリフォルニア州サンディエゴ市で開催中のコミコンインターナショナルにて、ウィル・アイズナー コミックインダストリー アワード(The 2018 Will Eisner Comic Industry Awards 以下、アイズナー賞)の授賞式が開催された。この場で各部門の受賞作品、受賞者も発表された。
 アイズナー賞は米国のコミック業界が過去一年間で特に優れた業績を残した作品、アーティストを顕彰する。米国のコミック業界で、最も注目されるアワードとして知られている。
 さらに長年、コミック業界に貢献してきた人物を「コミックの殿堂(The Comic Industry’s Hall of Fame)に加える顕彰活動でも知られている。2018年のコミックの殿堂入りのひとりに、日本のマンガ家の高橋留美子が選ばれた。 

 日本作家がコミックの殿堂入りをするのは、手塚治虫、小池一夫、小島剛夕、大友克洋らに続く。コミックの殿堂は選考の厳しさでも知られており、特に今回高橋留美子が選ばれた多数の候補者の中から業界人が投票で選ぶ投票部門は非常にハードルが高く、日本からは他に2012年の大友克洋しかいない。快挙と言っていいだろう。
 実際に高橋留美子は、2014年、2016年、2017年と過去に3回候補に挙がりながら手が届かなかった。4回目にして、遂に殿堂入りを実現した。

 高橋留美子は、『うる星やつら』、『めぞん一刻』、『らんま1/2』、『犬夜叉』、『境界のRINNE』など1970年代後半から常に大ベストセラーを生みだしてきた巨匠だ。しかし米国ではそれ以上に、日本のマンガを代表する人物として別格の存在だ。
 『うる星やつら』は英語翻訳された初期の日本マンガの代表作で、『犬夜叉』は2000年代の日本マンガブームの基礎を築いた。米国の日本翻訳マンガ出版最大手であるVIZ Mediaも高橋留美子作品によって成長し、いまの地位を築いた。作品に加えて歴史的な評価も、今回の殿堂入りにつながったとみられる。

 2018年のアイズナー賞では、コミックの殿堂入りをしているもう一人の日本作家による作品も脚光を浴びた。大友克洋の『AKIRA』である。連載開始35周年を記念して、米国のKodanshaが発売した全話収録の特装版が、アーカイバル・コレクション/プロジェクト(Best Archival Collection/Projec)部門と出版デザイン(Best Publication Design)部門の2つで最優秀賞に輝いた。
 『AKIRA』には熱狂的なファンが多いことでも知られる、記念版は高額商品にも関わらず大ヒットになっている。優れた企画とデザインもこのヒットの理由だろう。

 このほか日本作品では、翻訳出版アジア部門(Best U.S. Edition of International Material — Asia)で、田亀源五郎の『弟の夫』が最優秀賞に選ばれた。谷口ジロー『ふらり。』、野田サトル『ゴールデンカムイ』、萩尾望都『バルバラ異界』、伊藤潤二選集の他の候補作から抜け出した。
 米国コミックを中心に活動する日本人アーティストのタケダ・サナがイラストレーションを担当した『Monstress』も大活躍だった。最優秀シリーズ賞(Best Continuing Series)、最優秀ティーンズ作品(Best Publication for Teens (ages 13-17))を受賞、タケダ・サナ個人でも最優秀ペインター/メディアアーティスト賞(Best Painter/Multimedia Artist (interior art))を受賞している。

ウィル・アイズナー コミックインダストリー アワード
(The 2018 Will Eisner Comic Industry Awards)

https://www.comic-con.org/awards/eisner-awards-current-info

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