日本のスーパー戦隊シリーズをベースに1990年代より米国で製作され、世界的に人気を博してきた『パワーレンジャー(Power Rangers)』が大作映画となる。『映画パワーレンジャー:Power Rangers movie』 が2017年3月24日に全米公開される。製作はサバン・ブランズとライオンズゲート、配給はライオンズゲートとなる。
製作決定から話題を呼んできた本作のトレーラーが、10月6日から4日間の予定で開催されているニューヨーク・コミコンで初披露され、大きな話題を呼んでいる。映像ではパワーレンジャーとなる主人公の高校生5人によりフォーカスしていることを窺わせる。高校でのシーンが多く、子どもたちというよりはティーンズより上の世代をターゲットにしている印象だ。テレビシリーズよりストーリーもアクションもハードになった『パワーレンジャー』がどうファンに受け止められるかが、注目される。
本作はビジネス面でも、目を惹く点が多い。『パワーレンジャー』の製作に参加するサバン・ブランズは米国エンタテイメント界の大物実業家ハイム・サバンが2010年に設立したライセンスマネジメン会社である。数々のキャラクター、ブランドを手がけるが、『映画パワーレンジャー』が初の劇場映画進出となる。
『パワーレンジャー』はもともとハイム・サバンが90年代に東映から米国でのローカライズ権利を取得、大ヒット作に育てあげた。2001年に関連会社のディズニー売却と共に作品を手放したが、2010年にサバン・ブランズを設立したのを機に権利を買い戻した。サバン・ブランズのもとで新テレビシリーズの制作を始めるなど、ブランド再生に挑んでいる。今回の映画化はパワーレンジャーのブランド強化に向けた最大の施策となる。
一方ライオンズゲートは、ハリウッドメジャーと呼ばれるコングロマリットが映画製作、配給ビジネスで強い影響力を持つなか、独立系の映画製作会社として存在感を放っている。『ハンガーゲーム』4部作の大ヒットで知られるほか、2012年には「トワイライト・サーガ」シリーズなどを製作するサミット・エンターテインメントを子会社にした。テレビドラマも積極的に手掛ける。
ティーンエイジャーを中心としたヤングアダルトな作品を得意とするだけに、『パワーレンジャー』はまさにライオンズゲートらしいと言える。アメコミ原作ではなく、かつ知名度の高いアクションキャラクターのビジネスを今後どう広げるかが課題になる。
日本にとっては、日本発のコンテンツをもとにした大作映画の成否が気になるところだろう。近年、日本生まれのコンテンツから生まれた映画では、『トランスフォーマー』や『GODZILLA ゴジラ』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などヒット作も少なくない。『パワーレンジャー』がこれらに続くかどうかだ。
日本の玩具会社バンダイは、『パワーレンジャー』関連のグッズを数多く製造、販売している。作品のヒットは日本企業のビジネスへの広がりも大きい。
サバン・ブランズは、『パワーレンジャー』以外にも多くの日本の作品、キャラクターを手がけている。現在は「プリキュア」シリーズが有力番組のひとつだ。番組はテレビでなくNetflixで配信中だが、『パワーレンジャー』の成功は、今後も日本作品での新たなビジネスの可能性にもつながる。