米国の大手映画会社ライオンズゲート(Lionsgate)は、2016年12月8日付で大手ケーブル局のスターズ(Starz)を買収することで合意に達したと発表した。現金の支払いとライオンズゲートとの株式交換を組み合わせた買収総額は約44億ドル(約5000億円)になる。
ライオンズゲートは買収により映像制作が強化されるほか、スケールメリットにより世界市場での存在感が増すとしている。また、スターズの映像パッケージ部門とテレビ番組配給部門は、ライオンズゲートの同部門と統合する予定だ。スターズの代表取締役兼CEOのクリス・アルブレヒト氏は引き続き現在の役職に留まる。
ライオンズゲートは1997年に設立。数々の買収を通じて、映画、テレビ番組の複合メディアとして急成長している。テレビ番組では『Nashville』や『Mad Men』といったヒット作がある。また映画では2012年からスタートしたメガヒット「ハンガー・ゲーム」シリーズが有名だ。2017年には、日本のスーパー戦隊シリーズを基にした『パワーレンジャー』の劇場映画の配給が控えている。
一方、スターズは、米国でも有数の規模を誇る有料テレビチャンネルで契約者数は約2450万世帯となっている。複数の放送局の運営に加えて、自社製作の映画やテレビ番組が多いことでも知られる。その数は1万6000にも及ぶ。クオリティの高さで定評があり『Spartacus』といったヒット作がある。
ライオンズゲートは2012年には、「トワイライト」サーガシリーズで知られる独立系の大手映画会社サミット・エンタテインメントを買収している。これにより映画製作で、ハリウッドメジャーと呼ばれる伝統的な映画会社に迫る存在感を持つようになった。今回のスターズ買収で、テレビ放送、とりわけテレビドラマでもその存在感を大きく高めることになる。
2016年になり米国では、映画・テレビ関連の大型M&Aが相次いでいる。10月にAT&Tによるタイムワーナー買収合意が発表されたばかりである。1月には中国のワンダ・グループが『GODZILLA ゴジラ』や『パシフィック・リム』のレジェンダリー・ピクチャーズを買収、5月にはコムキャスト/ユニバーサルによるドリームワークス・アニメーションの買収もあった。12月10日には、21世紀フォックスによる英国の放送ビジネスの大手企業スカイの買収交渉が進んでいることが報じられた。世界の映像エンタテイメントは、ますます巨大化する方向のようだ。