アニメ製作の大手企業サンライズが、小説のジャンルで新たな試みをスタートする。2016年9月30日に、オリジナル小説を中心に連載をするウェブサイト「矢立文庫」がオープンとなった。
矢立文庫は、サンライズの社内に眠る様々な企画を公開するものだ。アニメを制作するうえで生まれた企画の一部を新たに読み物のかたちでファンに届ける。
編集長を務めるのは、「コードギアス」シリーズや「劇場版∀ガンダム」や『プラネテス』などを手がけてきたサンライズの河口佳高プロデューサーである。河口氏はサイトの挨拶で、原作のないオリジナルアニメ企画を生み出す苦労と、矢立文庫をそうした制作現場を覗いたような気分になれる場にしたいと語っている。
またサイトのタイトルの「矢立文庫」は、サンライズのオリジナル原作・原案にしばしばクレジットされる矢立肇から採られていると見ていいだろう。矢立肇は実在する人物ではなく、サンライズが会社として開発した原作を代表する表記である。
サイトオープン時には、プレオープンの際から連載を開始していた『装甲騎兵ボトムズ 絢爛たる葬列』、そして『IPポリス つづきちゃん』、『はるかの星』、『ミレニアムソーン』、『エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部』、『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』の6作品が掲載されている。
『装甲騎兵ボトムズ 絢爛たる葬列』はボトムズシリーズの監督を務めた高橋良輔氏が著者、そしてアニメのようなキャラクター設定、大河原邦男氏がメカニカルデザインするメカ紹介もつけられている。アニメの企画らしさが伝わる。
これまでに全く見たことのない作品と、『ゼーガペイン』や『ガオガイガー』など人気作品を題材にしたもの2種類が連載されている。いずれもこれがアニメになったらと考えるのも楽しい。
さらに今後の目玉もある。宇宙世紀を舞台にしたガンダムの新作ストーリーとなる『機動戦士ガンダム TWILIGHT AXIS』が10月中に連載をスタートする。『機動戦士ガンダム UC』で描かれたラプラスの箱=宇宙世紀憲章をめぐる事件後を舞台にしたものだ。
ストーリー構成・デザイン協力には、マンガ『蒼き鋼のアルペジオ』や『機動戦士ガンダムMSV-R ジョニー・ライデンの帰還』のArk Performanceが参加。アニメ『蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐』や『アルスラーン戦記』の脚本の中村浩二郎氏が著者となる。
こうして見ると、矢立文庫は埋もれた企画にもう一度光をあてるだけでなく、新しい作品として育てていく場にも見える。手応えがあれば、そこから新たな企画が生まれるのでないかと期待させる。
大手製作会社であっても、紙出版で矢継ぎ早にオリジナル小説を連載、刊行するのは労力がいる。しかし、ウェブサイトではそれが容易になる。ネット時代の特性を活かしたサンライズの新たな挑戦でもある。
サンライズ http://www.sunrise-inc.co.jp/