2019年4月21日、朝日新聞社が「第23回手塚治虫文化賞」の各賞を発表した。過去一年間、国内で刊行・発表されたマンガから優れた成果のあった作品や個人・団体を顕彰するものだ。数あるマンガ賞のなかでもとりわけ注目の高いひとつである。
その年の最も優れた作品を選ぶマンガ大賞には、有間しのぶ氏の『その女、ジルバ』が選ばれた。ホステスの平均年齢が70歳以上というバーを舞台に、深みのある物語が高く評価された。
また斬新な表現や画期的なテーマなどの才能のを対象に作者を顕彰する新生賞は、『あれよ星屑』を描いた山田参助氏に決まった。本作で描いた歴史の光と闇、人間の欲や業の鮮烈さに対する力量を贈賞の理由に挙げている。『あれよ星屑』は第二次大戦後を生きたふたりの男を描いた作品。山田参助氏は、デビュー当初にゲイ向けの雑誌などで活躍するなど経歴も異色だ。
短編賞は小山健氏の『生理ちゃん』。短編賞は短編のほか4コマや1コマ作品を対象にしている。本作は生理現象をキャラクター化した異色作、「月刊コミックビーム」に連載されている。
また特別賞として、マンガ家のさいとう ・ たかを氏を顕彰する。特別賞は毎年、マンガ文化の発展に寄与した個人・団体を顕彰している。さいとう氏が『ゴルゴ13』で50年もの連載を続けたこと、また長年にわたりマンガ文化へ貢献してきたことを選定の理由に挙げた。
さいとう氏は、1936年、和歌山生まれ。数々の作品で日本の劇画文化の誕生にも深く関わった。またマンガ制作に大胆な分業制を取り入れた「さいとう・プロダクション」は、マンガ文化においての革新的な成果となっている。代表作には前出の『ゴルゴ13』のほか、『台風五郎』『バロム・1』『鬼平犯科帳』など。現在も日本のマンガ界で欠かせない存在である。
手塚治虫文化賞は、1997年に朝日新聞社が日本のマンガ文化の巨匠・手塚治虫の業績を記念して設立した。日本のマンガ文化の発展を目的に、毎年優れたマンガ作品、作家らを顕彰している。
選考はマンガ分野の専門家で構成された委員会でされる。最終候補に残った作品を委員が持ち点絵性で投票、その結果をもとに合議にて決定する。今回は、マンガ家の秋本治氏、里中満智子氏、みなもと太郎氏、小説家の桜庭一樹氏、女優・杏氏、学習院大学教授の中条省平氏、それに研究家の南信長氏、ヤダトモコ氏らが社外選考委員として参加した。
選考過程の一部は、朝日新聞紙上でも公開している。今回は投票段階で桜庭氏、中条氏、ヤマダ氏が『その女、ジルバ』を強く推し、得点で他作品を大きく引き離していることが分かる。また他の作品は得点が割れている。
贈呈式は6月6日に、東京・築地の浜離宮朝日ホールにて開催する。当日は、抽選で一般ファンも招待される。
第23回手塚治虫文化賞
http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/
■マンガ大賞
『その女、 ジルバ』 有間しのぶ
■新生賞
山田参助 『あれよ星屑』の力量に対して
■短編賞
『生理ちゃん』 小山健
■特別賞
さいとう ・ たかを