日本映画製作者連盟は2022年1月25日に、2021年の国内映画概況を発表した。一年間の映画興行は1618億9300万円だった。依然、コロナ禍での様々な規制や映画興行スケジュールの乱れが続くなかではあったが前年比で13%増、また劇場入場者数も1億1481万8000人と8.2%増である。
2020年には最終興行が400億円を超えた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』があったため、この反動も考えれば21年は回復基調といえる。それでも19年の2611億円からは差が大きく、本格的な回復は22年以降に期待することになる。
また興行収入の伸びが入場者数の伸びを上回ったのは、入場料金の平均単価が前年の1350円から1410円に上昇したためである。IMAXや4DXなどより入場料が高い体感型の興行が人気を集めたこと、2019年下期からの各映画館の入場料値上げが影響したとみられる。
本格回復に向けての課題が、洋画の不振である。不振を極めた20年の340億900万円からさらに1.3%減の335億5400万円となり、興行全体に占めるシェアは20.7%と全体の1/5である。邦画の1283億3900万円(17.4%増)と対照的な結果だ。
興行収入10億円以上は邦画が32本に対して、洋画は『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(36.7億円)、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(27.2億円)、『ゴジラvsコング』(19億円)などを含めて5本にとどまっている。大作の相次ぐ公開延期に加えて、プロモーションが十分でない作品もみられた。
アニメ映画は活発だった。国内アニメ映画で興行10億円以上の作品は13本にもなり、前年の7本から倍増した。2020年の興行収入ベスト3は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(102.8億円)、『名探偵コナン 緋色の弾丸』(76.5億円)、『竜とそばかすの姫』(66億円)とアニメ映画が占めた。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』(33.9億円)がシリーズ最高、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(22.3億円)が興行収入の統計になって以来ガンダム映画で最高。4月の新作長編に向けた総集編映画『名探偵コナン 緋色の不在証明』が12.4億円といったサプライズなヒットも多かった。
洋画アニメーションで10億円を超えた作品は、2020年に今年も続きなかった。国内興行での洋画不振はアニメーション分野にも表れている。
日本映画製作者連盟の興行ランキングは作品公開日が前年末からで、該当年度末の作品も含まないイレギュラーなかたちになっている。このためリストには21年12月24日公開の『劇場版 呪術廻戦 0』や19年から引き続き興行した『「鬼滅の刃」無限列車編』が含まれない。『劇場版 呪術廻戦 0』は12月31日までで40億円以上、『「鬼滅の刃」無限列車編』は21年内で67億円以上の興行収入があったとみられる。
これらに50億円~60億円程度とみられる10億円以下の公開アニメ作品の興行収入を加えると、邦画アニメのみの2021年の興行収入は500億円台が見込まれる。これは2020年の617億円(日本動画協会統計)には及ばないが、こちらも『「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒットを考えれば堅調と言ってよいだろう。
日本映画製作者連盟 http://www.eiren.org/
【2021年度興収10億円以上の作品(映画製作者連盟発表)】
[アニメ映画のみ抜粋]
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 102.8億円 (東宝/東映/カラー)
『名探偵コナン 緋色の弾丸』 76.5億円 (東宝)
『竜とそばかすの姫』 66億円 (東宝)
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』 33.9億円 (東宝)
『STAND BY ME ドラえもん 2 』 27.8億円 (東宝)
『えんとつ町のプペル』 27億円 (東宝/吉本興業)
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 22.3億円 (松竹)
『劇場版ポケットモンスター ココ』 20.2億円 (東宝)
『銀魂 THE FINAL』 19億円 (ワーナー・ブラザース)
『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』 17.7億円 (東宝)
『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』14.3億円(アニプレックス)
『すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』 12.6億円 (アスミック・エース)
『名探偵コナン 緋色の不在証明』 12.4億円 (東宝)
*作品は一部2020年末公開を含み、2021年末公開を含まない。