東宝、国際展開を本格化 米国子会社に154億円投資

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 国内最大手の映画会社である東宝が、海外事業に本格的に打ってでる。米国子会社Toho International,inc.(国際東宝㈱)の資本を大幅に増強し、これまでより大きなプロジェクトに乗り出す体勢を整えた。
 2019年3月5日付でToho Internationalは増資を実施、東宝はこの全株を引き受けた。増資前の東宝の所有株式は3000株だったが、これがいっきに138万3000株まで増える。株式の取得価額は154億4600万円。高収益で知られる東宝ではあるが、国内エンタテンメント企業の海外投資としては破格の規模になる。東宝の海外事業にかける意気込みの大きさを感じさせる。

 こうした大きな投資の向こうにあるのが、2018年の「TOHO VISION 2021 東宝グループ 中期経営戦略」発表以降、次第に明らかになってきた同社の海外戦略だ。ひとつは国際共同製作事業、もうひとつは海外におけるキャラクター事業の積極策である。
 共同製作では日本の有力コンテンツを軸に、ハリウッドメジャーという巨大企業とパートナーを組む。すでに5月31日米国公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、5月3日日本公開の『名探偵ピカチュウ』などに出資する。さらにこの後も『モンスターハンター』、『君の名は。』、『僕のヒーローアカデミア』などの企画が浮上している。
 またキャラクター事業では、海外におけるゴジラの商品化権を全て東宝に集中し自らビジネスに取り組んでいる。映像からさらにその先に広がるキャラクタービジネスの巨大市場を視野にいれる。

 しかしハリウッド映画の製作出資、現地でのライセンス事業となれば、相当の資金が必要だ。今回のToho Internationalの増資は、その資金的なバックグラウンド、裏付けと考えられる。さらに本格的な現地拠点が必要なるため、それに相当するものとしての今回の増資とみられる。
 Toho Internationalは、設立こそ1953年と古いが、これまでの事業の中心は不動産賃貸。過去3年間の売上高は毎年1万2000ドル(約130万円)、休眠状態である。すでに設立されている会社の登記は使うが、事実上米国法人の新たな立上げと言っていいだろう。同社の代表取締役は常務取締役で映画営業、番組販売、そして国際事業を担当する松岡宏泰氏が務める。
 ハリウッドビジネスへの本格参入ともみえる今回のToho Internationalの大幅増資。日本の映画業界のトップ企業がどんな実績を米国に残すのか、日本のエンタテイメント業界の海外進出のうえでも見逃せない動きだ。

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