2019年3月23日、国内最大規模の総合アニメイベントAnimeJapan 2019が、4日間の予定で東京ビッグサイトでスタートした。新作の製作発表や最新情報も相次ぐことから、日本だけでなく、世界から注目されるイベントだ。
初日となった23日、そんなグローバルなAnimeJapanを象徴する大きな発表がされた。メイン会場に設けられた中国企業ビリビリ(bilibili)のステージにて、中国の大手アニメ企業の同社と米国の日本アニメ大手企業ファニメーション(Funimation)が、国境を越えた戦略的事業提携を明らかにした。
ステージにはビリビリの副社長兼 COOである李旎氏、ファニメーションの会長兼CEOのゲン・フクナガ氏らが登壇。今回の提携の意義を語るとともに、がっちりと握手した。
今回の提携で、両社はそれぞれが保有する作品を相手地域でのサービスに相互提供する。中国・アジアを中心とするビリビリと、北米・英語圏を中心とするファニメーションはビジネスの競合が少なく、相互補完関係になる。両社は提携で作品の獲得・ラインナップの充実、作品の企画・開発能力も強化できるとしている。さらにアニメだけでなく、より幅広いコンテンツの配給でも協力を目指す。
ビリビリは動画配信をはじめ中国での日本アニメビジネスの最大手。2017年には米国・NASDAQ証券取引所に上場するなど事業領域も拡大し、破竹の勢いで成長している。
中国市場での日本アニメ配信ライセンス買付けの最大手であるだけでなく、近年は日本アニメへの直接投資をしている。さらに東京にアニメスタジオを設立し、アニメーション制作にも参入する。
またファニメーションは、1994年に設立された北米の日本アニメ企業。長い歴史とシェアの高さで存在感が大きい。『ドラゴンボール』や『進撃の巨人』、『ONE PIECE』、『僕のヒーローアカデミア』などの北米権利を保有する。
近年、増加の一途を続けるアニメーション制作だが、その背景のひとつに海外企業の日本アニメの直接出資、企画段階からのビジネス参加によるニーズの拡大がある。米国では配信大手のNetflixやクランチロールなどが筆頭だ。2018年にソニー・ピクチャーズ傘下となったファニメーションもこの分野の進出を狙っているとみられる。また中国では同様にテンセントやハオライナー、それにビリビリが日本アニメの製作進出に積極的だ。
一方でアニメーション本数の増加は、アニメーション制作コストの上昇を招いている。かつては30分一本1000万円台の予算とされることが多かったが、いまは2000万円台、3000万円も珍しくない。
こうした製作・制作予算の高騰は、資金が豊富とされている米国企業や中国企業にも影響を与えている。そこで市場が重ならない両国の有力企業が負担を分け合うことは合理的な選択だ。
米中両国の提携は、日本企業にも影響を与えそうだ。海外企業の日本アニメ製作進出は、日本アニメビジネスでありながら日本企業が関わらない状況を生み、日本企業の存在感の低下も招きかねない。
同時に日本企業にとってもチャンスは大きい。制作費の高騰は日本企業にとっても負担が増している。アニメ市場を中国、北米、そして日本の3つ地域で分けることで、3地域の企業がそれぞれコストを分担することも考えられる。
いずれにしても、今回のビリビリとファニメーションの提携は、急速にグローバル化の進む日本アニメの一面を現したかたちだ。提携の行方は、今後も注目されそうだ。