アヌシー国際アニメーション映画祭が、中止されたリアルイベントに代わるオンライン映画祭の概要を明らかにした。アヌシーは世界最大のアニメーション映画祭で、当初はフランス・アヌシーで2020年6月15日から20日を予定していた。しかし新型コロナウィルス感染症の拡大を理由に、現地でのイベントを取止めている。
代替イベントとして企画されたのが今回のオンラインバージョンである。映画祭は多彩な部門を持つが、オンライン版もかつてない規模を実現しそうだ。さらに国際見本市・カンファレンスのMIFAもオンラインで同時展開する。開催期間は当初のリアルイベントより長い6月15日から30日までの2週間となる。
映画祭は、まずイベントの華となるコンペティションを上映を含めて配信する。さらにオリジナルのプログラムも用意する。アヌシー60周年記念企画、アフリカ特集は2021年に持ち越されたから当初予定より縮小しそうだが、映画祭として十分だ。
驚くのは映画祭で人気の「Work in Progress」、「Masterclasses」、「Making Of」もあることだ。これらは著名なクリエイターやプロデューサーが登壇したり、完成前の話題作が登場する。これまで日本からの登壇も少なくなかった。フランスに行かずにこれらに触れられるのは大きなサプライズだ。
ビジネスサイドのMIFAも、従来の機能の多くをオンラインに移行する。実現前のアニメーション企画をプレゼンテーションする「Mifa Pitches」「Pitching –Territory Focus」、情報交換やネットワーキングの場である「Meet the…」「Share With Sessions」「Industry Territory Focus Mifa Special Events」、さらにリクルートの場である「Mifa Campus」。企業・団体のブース出展はないが、「Video library」があれば膨大な作品にアクセスでき、ビジネス交渉も可能だ。
現在エンタテイメント系のイベントのオンライン移行では、コンテンツを無料で一般開放することも少なくない。しかしアヌシーでは映画祭へのアクセスは15ユーロ(約1700円)、MIFAは110ユーロ(約13000円)の料金が必要となる。
それでも例年の現地での登録料に較べると格安の設定だ。人々がオンラインのアニメーション映画祭や国際見本市にお金を支払う準備があるかに対する挑戦でもある。こうしたやりかたはすでカンヌ映画祭でも導入を表明しており、新たなビジネスモデルを模索するなかのひとつだ。
オンライン開催が広く認知されれば、映画・アニメーションの映画祭、見本市のありかたにも影響を与えそうだ。現在の新型コロナ感染症の影響がなくなった後でも、新興勢力がオンラインに特化した映画祭・見本市を低コストでスタートすることも可能になる。あるいは既存の映画祭・見本市が現地イベントに加えてオンライン展開することで、より多くの関係者の参加を実現できるかもしれない。単なる代替手段でなく、今後のエンタテイメントビジネスの在りかたにも一石を投じる。
アヌシー国際アニメーション映画祭&MIFA
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