2018年夏、AT&Tとタイムワーナーの経営統合で誕生した巨大エンタテイメントグループのワーナーメディアが早くもインターネット向けのコンテンツ配信事業の再編を開始した。旧AT&Tのファン向け配信事業会社であったオッターメディア(Otter Media)の事業を再構築する。
オッターメディアの中核事業はクランチロール(Crunchyroll)を中心とするイーレション(Ellation)、フルスクリーン(Fullscreen)、ルースター・ティース(Rooster Teeth)が含まれている。
また米国の複数のメディアが、大規模なレイオフを実施すると伝えている。オッターメディアのグループ社員の約10%が対象になるという。
再編の目玉は、経営統合を象徴するものになる。現在はワーナーブラザースが運営しているゲームファン向けコンテンツ配信サイトのマニシマ(Machinima)の事業を2019年1月付でオッターメディア傘下に移管する。
同時に日本でも人気のアニメ『RWBY』でも知られるコンテンツ制作のルースター・ティースが、イレーションの事業部門となる。イレーションは現在、日本アニメ配信のクランチロール、ギーク向けコンテンツ配信のVRVの2部門だが、これが拡張するかたちだ。
さらに配信サイト向けのタレントやクリエイターをマネジメントするフルスクリーンでも大がかりな事業見直しをするという。広がり過ぎたサービスをクリエイター支援にフォーカスする。
再編後のオッターメディアの主要事業は、「イレーション」、「マニシマ」、「フルスクリーン」の3つとなる。さらにイレーションの下に、「クランチロール」、「VRV」、「ルースター・ティース」が並ぶかたちだ。
日本側から気になるのは、アニメ配信のクランチロールの動きだ。クランチロールは現在約900タイトル、2万5000エピソードの日本アニメを無料、一部有料で配信している。有料会員数はすでに200万人を超えている。
社員数は世界で約350名、サンフランシスコとロサンゼルスに200名あまり、東京に約20名、そしてシステム関連を中心にモルドバに約120名超となっている。このどのくらいが今回のリストラの対象になるかは不明だ。
一方で事業再編に先立って、クランチロールの創業メンバーでCEOも長く務めたクン・ガオ氏がイレーションの経営陣より退任している。クランチロール創業初期のメンバーはほとんどいなくなり、AT&T、ワーナーメディア傘下で新体制構築が急速に進む。
イレーションのCEO トム・ピッケット氏がクランチロールとVRV、ルースター・ティースを統括、さらにクランチロールの新しいジェネラルマネージャーにジョアンナ・ヴァーゲ氏が就任している。ヴァーゲ氏は前職で、アジア番組に強みを持つグローバル配信ビジネスの楽天VIKIのCEOを務めていた。こうした経験をクランチロールで活かすことになる。