アヌシー映画祭、小田部羊一氏が特別ゲスト 山村、西村両氏が審査員に

小田部羊一氏

 アヌシー国際アニメーション映画祭は、アニメーション分野では世界で最も歴史が長く、最大規模を誇る映画祭として広く知られている。近年その注目度はさらに高まっているが、今年は日本での関心も大きくなりそうだ。
 アヌシー映画祭は2019年を日本特集と定め、日本アニメーションの歴史と現在を一望する。その特集の一端がこのほど明かされた。

 まず戦後日本アニメの草創期を代表するアニメーター小田部羊一氏を特別ゲスト(Guest of Honour)として映画祭に招くことをビッグニュースだ。期間中の企画は今後の発表になるが、講演会や参加作品の上映などが期待できそうだ。
 小田部氏は1936年台湾生まれ。東京藝術大学卒業後、1959年に東映動画(現東映アニメーション)に入社してアニメのキャリアに進んだ。高畑勲氏や宮崎駿氏と同時期に、東映動画の数々の名作、その後も日本アニメを支えた。『ハッスルパンチ』(65)、『アルプスの少女ハイジ』(74)、『じゃりン子チエ』(81)など代表作は数多い。後年は任天堂にてマリオシリーズのキャラクターでも活躍している。

 またコンペティションの審査委員に、日本からふたりが加わることも発表されている。アニメーション作家として国際的に活躍する山村浩二監督は、『頭山』にてアヌシーのグランプリにも輝いている。もうひとりはスタジオポノック代表取締役社長の西村義朗プロデューサー。長年スタジオジブリに所属し、『かぐや姫の物語』のプロデューサーとしても知られている。
 スタジオポノックの『ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間』は、現地にて上映イベントも行う。フランス公開は初、こちら話題を呼びそうだ。
 日本からの上映作品は盛りだくさんで、日本のアニメーション史を一望するものとなる。このほかクラシックのショートアニメーションの上映も多数予定。日本でも上映機会、視聴機会がほとんどなかった安彦良和監督の『ヴイナス戦記』のリマスター版が目玉作品として挙げられた。映画祭はこれまで紹介される機会がなかった日本作品も多いとし、それらを積極的に上映するとしている。

 アヌシー映画祭は6月10日から20日まで、フランス・アルプスに位置するアヌシー市街を会場に開催。またアニメーションの国際企画・番組見本市MIFAは11日から14日まで実施される。
 映画祭での日本特集は1999年以来20年ぶり。ここで再び日本にスポットライトを当てることについてアヌシーは、過去20年間で日本のアニメーションの作り手はヨーロッパで存在感を増している、さらに若者たちの間ではアニメが人気を獲得していることを理由に挙げる。
 また期間中は文化面だけでなく、ビジネスの交流活性化も期待出来る。映画祭とMIFAには日本より多くの業界人が訪れるという。日本側も積極的で、MIFA会場には150㎡の日本ブースを構える予定だ。

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